以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0211
漢字は中国でだけ生まれたのですか? 他の国では生まれなかったのですか?
A
漢字が中国で生まれたのは、間違いのない事実です。しかし、中国でだけ生まれたのかというと、そうでもありません。
たとえば「働」という漢字は、もともとは日本で生まれた漢字です。日本人が、「はたらく」ということばの意味から、「にんべん(人)」と「動」を組み合わせて、新しい漢字を作ったのです。このように、中国人にならって日本人が独自に作り出した漢字を、国字と呼んでいます。
では、中国人にならって漢字を作ったのは、日本人だけだったのでしょうか。そんなことはないでしょう。漢字は、日本以外でも、朝鮮半島や、東南アジアでも使われましたから、その地域の人々が、日本人と同様に、自分たちのオリジナルの漢字を作り出したはずです。
阿辻哲次先生は、『漢字三昧』(光文社新書)の中で、8万字を収めるという中国の漢字辞書『中華字海』の中から、シンガポール製漢字を探し出して、いくつか紹介していらっしゃいます。図はそのうちの1つで、「無」の異体字だそうです。
シンガポールといえば、中国移民の国として知られています。中国人は世界中に移民していますから、探していけばそのうち、ロサンジェルス製漢字や、パリ製漢字なども見つかるかも知れませんね。