以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0208
漢字はどうして「漢字」というのですか? 漢王朝の時代に生まれたものなのですか?
A
Q0001でもご説明した通り、現在のところ、漢字の起源は紀元前1300年ごろまでさかのぼることができるとされています。漢王朝は、紀元前2世紀から紀元後2世紀までの約400年間、中国を支配した王朝ですから、漢字の歴史は漢王朝よりもずっとずっと古いのです。
そこで、「漢字」の「漢」とは王朝の名前ではなく、民族の名前だと考えた方がよさそうです。現在の中華人民共和国の人口の大半を占めるのは、漢民族と呼ばれる民族です。私たちが普通に「中国人」としてイメージしているのは、この漢民族の人々です。ですから、彼らが日常使っている言語、つまりは私たち日本人が「中国語」と呼んでいる言語のことを、中国語では「漢語」と言います。それと同様に、漢民族が使っている文字という意味で、「漢字」という呼び方があるのだと思われます。
東アジア地域の中で、固有の文字を発達させた民族は、長い間、漢民族だけでしたから、彼ら自身は、自分たちの使っている文字のことを単に「字」とでも呼べばよく、特別に「漢字」と呼ぶ必要はなかったはずです。しかし、10世紀ごろになると、漢民族の周辺にいた民族たちも、漢字にならって自分たち自身の文字を開発し始めます。おそらくこのころ、「漢字」ということばが誕生したのではないでしょうか。『大漢和辞典』では、「漢字」ということばが使われるようになったのは、モンゴル文字と対比してのことだと、説明しています。
日本では、ひらがなやカタカナが生まれて初めて、中国から渡来した文字を特別に指すことばが必要になってきます。当初、「仮名」に対して漢字のことを「真名(まな)」と呼んでいたことは、国語の時間に勉強した方も多いことでしょう。小学館の『日本国語大辞典』によれば、「漢字」ということばが使われ出すのは、13世紀ごろのようです。