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漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0052
「為替」は「かわせ」と読みますが、なぜ「かわせ」ということばにこの漢字を使うようになったのでしょうか。また、「為体」と書いてどうして「ていたらく」と読むのでしょうか。

A

難読語の辞典などを見ますと、「為替」は英語のmoney orderの訳語で、福沢諭吉が作った、と書いてあることがあります。しかし、「為替」と書いて「かわせ」と読む用例は江戸時代からあり、必ずしも福沢諭吉大先生だけの創作というわけでもないようです。
小学館の『日本国語大辞典』を見ますと、「かわせ」の語源は、「かわす」という動詞の連用形が名詞になったものか、とあります。そして、「かわす」の所を見ると、「為替」という表記もありますから、「為替」というのは、古くは「かわす」とも読んだようです。現在の「外国為替」のような使い方は、「かわす、とりかえる」という意味から派生してきたものでしょう。
しかし考えてみると、そもそも「替」という漢字に「とりかえる」という意味がありますから、「かわす」と読ませたいなら、これ1字でよさそうなものです。これに「為」がついているのは、推測するに、漢文風に「替(かえ)を為(な)す」、つまり「取り替えることをする」という意味なのかもしれませんし、あるいは「替(かえ)を為(な)さしむ」、つまり「取り替えさせる」という意味もしれません。
なんにしろ、この熟語の本質的な意味は「替」の方にあって、「為」の方は、付け足しのようなものといえそうです。つまり「為替」を「かわせ」と読むとき、少なくとも「かわ」の部分を担っているのは、上にある「為」ではなくて、下にある「替」の方なのです。
一方、「為体」の方は、こちらはまさに漢文風で、「体(てい)為(た)り」、つまり「為」を「たり」という助動詞として読んで、「そういう姿である」という意味を表しています。これに「恐らく」などと同じく「らく」を付して「ていたらく」と読み、「そういう姿であることには」というような意味として使っているわけです。
ちなみに「為替」や「為体」のように、漢字2文字以上をまとめて、それに日本語1語を当てて読むものを、熟字訓(じゅくじくん)と呼んでいます。「大和」(やまと)とか「五月雨」(さみだれ)などは、みなこの熟字訓です。

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