以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0515
新しい漢字を作って普及させることは、今からでも可能ですか?
A
なかなか気宇壮大なお話ですねえ。でも、現実はキビシイと思いますよ。
新しい漢字を作ることは、もちろん可能です。でも、それが社会一般に受け入れられて使われるようにならなければ、埋もれていくだけです。実際に使われないものを「漢字」と呼ぶことができるかどうか、むずかしいところです。
ご存知の通り、漢字は3500年以上の歴史を持っているわけですが、1番最近、漢字がまとまって創作されたのは、19世紀、西洋文明が東洋の社会に流れ込んできた時期でしょう。たとえば「糎」(センチメートル)などという漢字は、明らかにそれ以前には存在しなかったものです。また、小社『大漢和辞典』には図のような化学元素を表す漢字がたくさん載っていますが、これらもまた同様でしょう(左から順に、ラジウム、リチウム、マグネシウム)。
つまり、新しく創られた漢字が市民権を得ていくためには、それなりの社会的な条件が必要となるわけです。とすれば、これから新しい漢字を作って普及させていこうとするならば、社会的な状況から手を付けなくてはなりません。
手っ取り早いのは、秘密組織でも作って武力革命を起こし、革命政府の権力を背景に新漢字を普及させる方法です。漢字新党を立ち上げて合法的に政権奪取を目指す方が穏やかなのですが、二大政党制すらなかなか実現しないお国柄、そんなことを考えていてはいつ実現するやらわかりません。
なになに、もっと現実的な方法はないかって?だったら、秘策をお教えしましょう。なにか社会のあり方を変えてしまうような、大発明をするのです。そして、その発明に、新しい漢字で名前を付けるのです。そうすれば、その新漢字が普及することは間違いなし!
インターネットや携帯電話だって、専用の新漢字とともに現れていれば、どうなったかわかりませんよ。でも、小社に入社して『大漢和辞典』を改訂して、その中にこっそり自作の漢字を紛れ込ませるのと、どっちが早いでしょうかねえ。