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漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0500
中国に安徽省(あんきしょう)という地名がありますが、この「徽」の真ん中の部分は、「山」と「糸」の間に横棒があるのですか、ないのですか?

A

050001まずは、図をご覧ください。似たような漢字を4つばかり、集めてみました。1番右は「微妙」の「微」、次は「特徴」の「徴」、3番目がご質問の「徽」、1番左は「黴菌(ばいきん)」の「黴」です。
例によって異説もあるのですが、一般には、これらの漢字は親戚同士だ、と言われています。「微」の省略形に「王」が加わったのが「徴」、同様に「糸」が加わったのが「徽」、「黒(正確にはその旧字体)」が加わったのが「黴」だ、というわけです。
050002さて、問題はこの「微」の省略形、というときの省略のしかたなのですが、実はこの漢字は本来、図のような形をしていて、このうちのルのような部分だけを省略して、横棒は残す、というのが、伝統的なスタイルのようなのです。そこで、ご質問に対するお答えとしては、横棒がある方が「正しい」ということになります。
だったら、どうして「徴」には横棒がないの?と即座に思われた方は、もう立派な漢字マニアですね。実は、この漢字にももとは横棒があったのですが、例の当用漢字によって新字体が制定された際、省略されてしまったのです。そして、ご質問の「徽」も、1983年にJIS漢字が改定された際に、それにならって横棒が省略されてしまったのです。そしてそして、さらにやっかいなことには、2004年に行われたJIS漢字の改定では、この漢字は横棒がある方に戻されてしまったのです。
というわけで、「徽」という字は、現在のところ、コンピュータの世界では2種類の字体が並立することとなっています。このHPの地の文に出てくる「徽」も、WindowsVistaをお使いの方にはおそらく横棒ありに見えているでしょうし、それ以外の方にはたいて横棒なしで見えていることでしょう。
まったく、困ったことでしょう?コンピュータと漢字との関係には、まだまだこういった問題が潜んでいるのです。

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