当館では、『大漢和辞典』を始めとする漢和辞典を発行する大修館書店が、漢字や漢詩・漢文などに関するさまざまな情報を提供していきます。

漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0478
「1つ」「2つ」……と書いて「ひとつ」「ふたつ」……と読ませることがありますが、アラビア数字にも訓読みがあるのですか?

A

漢字は表意文字だ、と言われます。アルファベットが発音しか表していないのに対して、漢字は意味も表すからです。でも、漢字以外にどんな表意文字があるかと聞かれたら、ちょっと返事に困ってしまう人も多いのではないでしょうか。
その答は、意外と身近なところにあります。アラビア数字も、表意文字なのです。「1」「2」「3」……と書けば、その意味するところは世界中どこへ行っても、不変だからです。
では、アラビア数字の読み方はどうでしょうか。「1」は英語ではワンと読み、イタリア語ではウノと読み、中国語ではイーと読み、日本語ではイチと読む、といった具合に、その言語に応じてアラビア数字の読み方は変化します。つまり、アラビア数字は意味を表しているだけで、どう発音するかはその言語に任されている、というわけです。
ところで訓読みとは、漢字が本来持っていた中国語としての意味を、日本語に翻訳して読む読み方のことです。ですから、漢字ではないアラビア数字には、もともと音読みも訓読みも関係ないはず……。ただ、そういう意地悪を言わずに考えてみるならば、「1」をイチと読むのは、このアラビア数字が持っている意味を日本語に翻訳している、と見ることができます。つまり、日本語に翻訳しているという点で、「1」をイチと読む読み方も、訓読みと限りなく似ているのです。
とすれば、「1」の意味を、イチと同じ意味を表す別の日本語「ひとつ」に翻訳して読んだとしても、そんなにおかしなことではないでしょう。「1つ」「2つ」「3つ」といった書き方がされることがある理由は、ここにあります。特に横書きの場合、数字はアラビア数字を使って書いた方が読みやすいこともあって、この書き方がされることは少なくありません。
何を隠そう、当「漢字文化資料館」も、この書き方を採用しています。“漢字の殿堂”のはずなのになぜ?と首をひねる方もいらっしゃるでしょうが、この書き方は、表意文字とその読み方について、いろいろと考えさせてくれるいい実例でもあるのです。

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