以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0448
「2点しんにょう」を手書きするときは、どのように書けばいいのですか?
A
漢字の字形について考えるとき、「しんにょう」ほど厄介なものはありません。Q0099でもご紹介したように、「しんにょう」は本来、図の左端のような形をしていたわけですが、それが早い段階で真ん中のような「2点しんにょう」になり、新字体では右端の「1点しんにょう」へと変化を遂げたわけです。
では、「2点」と「1点」の違いは旧字体と新字体の違いなのかと言えば、それだけではすまされない部分があります。というのは、新字体が制定される以前から、主に手書きでは「1点」が使われていたからです。つまり、明朝体などの印刷字体では「2点」、手書きでは「1点」というように、両者が並行して存在していたのです。
そこへ新字体が制定された結果、新字体については、手書きも印刷字体も「1点」だということになりました。現在では一応、新字体が標準なわけですから、『常用漢字表』内の漢字は常に「1点」が「正しい」ということになります。
そのあたりの事情を整理すると、右の表のようになります。問題は、この???の部分ですが、昔通りの考え方でいけば、手書きでは「1点」なわけですから、常用漢字以外の漢字でも、「しんにょう」は「1点」で書くべきでしょう。
しかし、実際問題として、手書きと印刷(活字)とで、字形のみならず画数も変わってしまうというのは、現代人の感覚からはちょっと受け容れにくいのではないでしょうか。事実、新字体で「しんにょう」が「1点」のみとされたのも、そこに理由があります。その点を重く見れば、常用漢字以外の漢字は、手書きの際も「2点」で書くほうがよい、ということになります。
結局、どちらの立場を取るのかによって、結論が違ってくるのです。だから、「しんにょう」は厄介なのです。私は、厄介ごとは大嫌いなのですが、漢字と付き合っていくためには、時には我慢も必要なようです。