以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0410
「あげる」と読む漢字には、「上」「挙」「揚」などがありますが、英語の give の意味で使う場合には、どの漢字を書くのですか?
A
「犬にエサをあげる」という言い方はおかしいのではないか、という意見を耳にしたことはありませんか?「日本語の乱れ」現象の1つとしてよく取り上げられることばとして、この「あげる」があります。
英語のgiveの意味で使われる「あげる」は、本来は「やる」のていねいな表現だとされています。一種の謙譲語のようなものです。謙譲語とは、相手に対する敬意を表現するものですから、「犬に敬意を表してどうするんだ?エサをやる、で十分だろう」ということになるわけです。
そこで漢字のお話ですが、この「あげる」を漢字で書きたい場合には、「上」を使うのがよいのではないかと思います。なぜなら、この「あげる」は、相手に敬意を表するために、下から上へと差し出す、という意味だからです。
それはともかく、「犬にエサをあげる」論争に納得いかない気がするのは、私だけでしょうか?敬意を表すべき相手にぞんざいなことばづかいをしていることを問題にするのなら、話はわかります。しかし、この場合は逆で、敬意を表さなくてもいい相手にていねいなことばづかいをしていることを、問題にしています。
問題の「犬」が、「そんなていねいなことばを使われると、なんだか居心地が悪くって……ワン!」と文句を言っているのならともかく、あんまり神経質にならなくてもいいんじゃないでしょうか。