以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0400
「風」という漢字の成り立ちを知りたいのですが……。
A
大昔、中国の人々は、大きな鳥の姿をした神様が風を起こすと信じていたと言われています。そこで、甲骨文字の時代には、その神様の姿をかたどった図のような漢字が、「かぜ」を意味する漢字として使われていました。なにがなんやら、アヤシイ形をしていますが、よく見てみるとなんだか風を巻き起こす鳥の姿を描いているようではあります。
このアヤシイ漢字は、やがて変形を繰り返して「鳳」という形になります。音読みではホウ、訓読みだと「おおとり」と読む漢字です。現代日本語でも、伝説上の大きな鳥を意味する「鳳凰(ほうおう)」という熟語として使われますから、ご覧になったことのある方も多いでしょう。
さて、だとするとこの「鳳」が「かぜ」を意味する漢字となるはずなのですが、実際はそうはなりませんでした。年月の流れの中で、「鳳」から「風」が分離、独立したのです。つまり「鳥」が「虫」に置き換わったわけですが、なぜそんなことになったのかという点になると、なかなか定説はないようです。
そんな中でも有力な説として、この「虫」は竜のことを表している、という説があります。竜とは伝説上の動物で、大きな蛇の一種ですから、「蛇」が「虫へん」であることを考えると、「風」の中の「虫」が竜であっても、おかしくはありません。
この説が正しいとすると、中国古代の人々にとっての風の神様は、ある時期を境に、鳥から竜へと変化したのでしょう。なんだか浮気者のような気もしますが、嵐を呼んで天へと昇る竜もまた、風の神様としてはふさわしいものです。たまには、風の中に竜の姿を探してみるのもいいかもしれません。