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漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0398
「圏」という漢字には、どうして「巻」という漢字が含まれているのですか?

A

まず、「圏」という漢字がどのような意味なのか、考えてみましょう。「首都圏」や「北極圏」という熟語を考えるとすぐにわかるように、この漢字は「範囲」という意味を持っています。「首都圏」といえば首都の範囲であり、「北極圏」といえば北極の範囲だ、という具合です。
ただ、この漢字が意味する「範囲」とは、ただの範囲ではありません。「首都圏」とは通常、首都を中心にぐるりとした部分を表しますし、「北極圏」は北極点を中心にぐるりとした部分を指しています。この「~を中心にぐるり」というのが重要で、「圏」には、実は「まるい」という意味もあるのです。
「圏」は、「囗(くにがまえ)」と「巻」から成り立つ漢字です。「くにがまえ」の方は、「国」や「囲」「園」などに代表されるように、ある一定の囲まれた部分を表す部首です。それに対して「巻」の方は、訓読みは「まく」で、ものを巻くとまるくなるところから、「まるい」という意味を表しています。つまり「圏」は、本来、ある場所を中心にまるく囲まれた部分という意味を表す漢字だったのです。
「圏」のこの意味は、意識することはほとんどないかもしれませんが、現在でも生きています。たとえば「当選圏内にある」といえば、当選というある場所がイメージされていて、その中に頑として存在しているわけじゃないけれど、周りをぐるりととりまくどこかには存在している、ということになります。「合格圏内にいる」といえば、合格確実ではないけれど、そこを中心とした近辺にまで迫っている、というイメージになるわけです。
つまりは、「当選圏内」「合格圏内」と言われても、安心してはいけない、ということですね。「圏内」はあくまで「圏内」。「当選」「合格」するまでは、気を抜いてはいけないのです。

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