以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0394
「従兄弟」「従姉妹」と書いて「いとこ」と読みますが、どうして「従」という漢字が使われているのですか?
A
世の「いとこ関係」にも、仲が良かったり悪かったり、付き合いが深かったり浅かったりと、いろいろあるでしょうが、別に従ったり従わせたり、という関係ばかりでないことは当然です。だとすると、「いとこ」を表す漢字に「従」が入っているのは、なんとも不思議な現象だと言えましょう。
「従」という漢字は、もちろん「したがう」という意味を持っていますが、これが少し変化して、「付き添い」というような意味になることがあります。たとえば、少し古いことばですが「従者(ジュウシャ)」なんていうと、「付き添いの人」という意味になります。
そこからさらに少し変化すると、あるものに対して「その次のランクの」といった意味を表すことがあります。わかりやすくたとえて言うと、委員長と副委員長がいるとき、副委員長のことを「従」という漢字で表すことがあるのです。
「従兄弟」「従姉妹」の場合の「従」は、まさにこの用法です。「兄弟」「姉妹」ではないのだけれど、ほとんど「兄弟」「姉妹」に近いくらいの血のつながりがある人のこと、という意味で「従」という漢字が使われているのです。
そこで、この「従」の意味は、「○○じゃないけどほとんど○○」と表すことができるでしょう。このうちの「じゃないけど」に力点を置くのか、「ほとんど」に力点を置くのかは、時と場合によって異なってくるでしょう。さてさて、みなさんの「いとこ」は、どちらでしょうか?