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漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0360
漢和辞典で「度」を調べると、部首が「广(まだれ)」になっていました。「广」は建物に関係する意味を持っていると聞きましたが、「度」は建物と関係があるのですか?

A

部首というものはまことに厄介なもので、ある部分では理路整然としているかと思えば、ある部分ではまったくいい加減なことがあるのです。このご質問は、まことに残念なことに、その「いい加減」の方にかかわっています。
部首としての「广(まだれ)」は、たしかに建物に関する意味を表しています。「広」は本来は建物が「ひろい」ことですし、「庁」はお役所の建物、「店」だって建物なら、「庫」だって建物の一種です。
しかし「度」は、字源的には「庶」の省略形と「又」から成り立つ、とされています。「庶」の音読みはショですが、古代中国ではドと似たような発音であったらしく、この場合の「庶」は単に発音を表していると考えてかまいません。
一方の「又」は、字源としては手の象形で、手を使った動作を表す部首として使われることがあります。そのことは、「取」や「受」を考えていただければ、納得していただけるかと思います。
「度」でも、「又」は手を使った動作を表しています。つまり、「度」というのは本来は、手を使って何かを測ることを意味する漢字なのです。
であるなら、「度」の部首は「又」である、とする方がいいはずです。部首は時には「いい加減」だと申し上げたのは、まさにこの点です。この漢字は、本来的に考えると「又」を部首とすべきなのに、なぜか昔から「广」を部首とするとされているのです。まったく、理の通らない現象です。
とはいえ、部首とは、漢和辞典で漢字を検索する重要な手段です。それをいじるということは、昨日まで「广」で引いていた漢字を、今日からは「又」で引いてください、と強要することにもなります。なかなか勇気がでないのも、わからないではありません。
というわけで、「度」は建物と何の関係があるのか、というご質問に対しては、何の関係もございません、というのがお答えとなります。人間、だれしもいい加減なところがあるものです。とすれば、漢字の世界はやはり人間世界の反映であるのです。

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