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漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0342
「法」という漢字は、水には関係がなさそうなのに、どうして「さんずい」が付いているのですか?

A

「法」の成り立ちについては、Q0302で一度、ちょっとご説明したことがありました。でも、そのときには、「さんずい」については、めんどくさいので説明をはしょってしまいました。このご質問は、私の怠け癖を突いた、痛いご質問であります。
言い訳を許してもらえるなら、私が説明をはしょったのは、単に怠け者だからだけではありません。「法」の成り立ちにはいろいろな説があって、限られたスペースでは簡単に説明できないのです。そこで、みなさんがQ0302を既にお読みになっていらして、カイチなる霊獣についてはご存じであるという前提で、「さんずい」に関係する部分だけ、説明しておくことにいたします。
「法」に「さんずい」が付いていることに関する1つの説明は、この「水」は「水平」の意味で、基準・標準を表している、というものです。つまり、善悪を判断できるという霊獣カイチと、基準・標準とを組み合わせて、世の善悪の標準を示す「法」という漢字ができあがっている、とするのです。
また、別の説として、この字は、まわりをぐるりと水で取り囲まれた小島に、霊獣カイチを閉じこめた図を表している、というのもあります。そうすると、たとえ霊獣といえども自由に動き回ることはできないわけで、そこから転じて、私たちの生活を規制する「法」という意味になる、というのです。
さらに別の説もあります。この説によると、古代中国の裁判では霊獣カイチを2匹用いたといいます。今風に言えば、検察側と弁護側に1匹ずつカイチがいるわけです。この2匹を争わせて、勝った方が裁判にも勝利するのです。かわいそうなのは負けたカイチです。敗れ傷ついた霊獣は、文字通り、水に流されてしまうというのです。「法」に「さんずい」が付いているのは、この「水」を表している、というのが、この説の主張です。
以上、3つの説をご紹介しました。法というのは、厳密な解釈が必要とされる、一般人からするとちょっと近寄りがたいものです。しかし、その「法」の起源が、実は曖昧模糊としてはっきりしないというのは、なにやら意味深な感じがしないでもありませんね。

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