当館では、『大漢和辞典』を始めとする漢和辞典を発行する大修館書店が、漢字や漢詩・漢文などに関するさまざまな情報を提供していきます。

漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0288
「募金」と「献金」では、意味はどう違うのですか?

A

漢字2字の熟語には、英語でいう「動詞+目的語」の形になっているものがたくさんあります。「募金」も「献金」もそうです。「募」の訓読みは「つのる」ですから、「募金」は「金をつのる(=金を集める)」、「献」の訓読みは「ささげる」ですから「献金」は「金をささげる(=金を差し出す)」と理解すればいいわけです。
そうすると、かたやお金を集めること、かたやお金を差し出すことなのですから、この両者は、全く逆の意味を持っていることがわかります。差し出してばかりいるとお金がどんどん減ってしまいますから、できることなら、集める方に回りたいと思うのが人情でもあります。
ところが、現実はそうアマイものではありません。集める方に回りたいと思って「募金」しようとしたあなたは、実は私たちの使っている「募金」には、お金を差し出すという意味があることに気づくことでしょう。
うそだと思うなら、インターネットで「募金する」を検索してみましょう。さまざまな募金サイトがヒットします。中には「1クリックで募金できます」なんてのもあります。そんなサイトへ行って、「募金する」ボタンをクリックしようものなら、あなたの財産は確実に減ってしまうのです。本来なら、お金が集まってくるはずなのに!
もちろん、「募金」という行為は、すばらしいものです。いい人ぶるようですが、私だってときには「募金する」ことがあります。でも、ここで問題にしているのは、その「募金」は、本来の「募金」とはことばの意味が違うということです。
これも、近ごろはやりの「日本語の乱れ」なのでしょうか?たしかにその通りでしょう。でも、これはすこぶる興味深い「乱れ」です。だって、私たちは勝手に「募金(=お金を寄付する)」ことはできないのです。だれかが本来の意味で「募金(=お金を集める)」しているとき、初めて私たちは「募金」ができるのです。
こんなことばは、ほかにもあるのでしょうか?ちょっと考えてみましたが、思いつきません。ご存じの方、ぜひお教えください。

  • facebookでシェア
  • twitterでシェア