以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0283
「運」や「進」の部首の名前は、「しんにょう」ですか「しんにゅう」ですか?
A
漢字の部首のうち、主に左側から下側へと回り込んでいるような形をしているものを、「にょう」と言います。漢字で書くと「繞」。この漢字の訓読みは「めぐる」ですから、回り込んでいるような形のことをこの漢字で表すわけです。
部首の名前としての「繞」は、音読みで「ニョウ」と読まれるのがふつうです。「起」や「趣」の部首である「走」は、「走繞」と書いて「ソウニョウ」という名前がついています。「延」や「建」の「廴」の場合は、「延(エン)」に使われている「繞(ニョウ)」だからというわけで、「延繞(エンニョウ)」と呼ばれるのが普通です。
さて、「運」や「進」の部首の場合は、形が「之(音読みはシ)」という漢字に似ているので、もともとは「之繞(シニョウ)」という名前がついていたようです。これが変化して「シンニョウ」となったわけですから、「シンニュウ」は間違いだ、ということになります。
理論的には以上のとおりなのですが、ある研究によると、実際に江戸時代や明治時代の字書などを調べてみると、「シンニュウ」と書いてあることの方が多いそうです。「繞」という漢字がむずかしすぎて読めなかったのかどうか、その理由はわかりませんが、理論的に正しいはずの「シンニョウ」が優勢になるのは、明治も終わりごろのことだとのこと。そこで現在では、「シンニョウ」「シンニュウ」どちらも正しい、とされるのが一般的です。
部首の名前というのは、自然発生的に生まれたもので、なにか決まりがあるわけではありません。そのため、複数の名前を持つ部首も多いのです。