以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0243
人名用漢字に「晟」という字がありますが、これをパソコンで見ると、1画多いように見えます。これでよいのでしょうか?
A
これは、フォントの問題です。ワープロで文字を入力して、その文字を選択してからフォントを切り替えると、書体がゴシックや明朝などに変化しますよね。ここからもわかるように、フォントによって漢字のデザインはいろいろに異なります。この「晟」という字に関しては、そのデザインの差が画数にまで影響してしまっているのです。
図は、ある2つの明朝体で「晟」という字を打ち出してみたものです。「成」の真ん中あたり、横棒が右に突き出ているのとそうでないのとがあることがわかりますね。このうちの突き出ている方が旧字体で、突き出ていない方が新字体です。この字が人名用漢字に入ったときに、字体が変更されたのです。
パソコンのフォントの字体は、原則的に日本規格協会が発行している規格票に定められています。フォントをデザインする人がこれに従っているからこそ、さまざまな人がさまざまなフォントを使っても、同じ字を目にすることができるのです。
この規格票には、この漢字は新字体しか掲載されていません。したがって、旧字体になっているフォントは、厳密にいえば、間違ってデザインされてしまったことになります。
フォントのデザインは基本的にデザイナーの自由ですが、このように画数が異なってしまうようなデザイン差は、漢和辞典としてはちょっと困ります。かりにネット上で動く漢和辞典を作ったとしても、それを見る人がどんなフォントを使っているかによって、表示している文字が違うことになってしまうからです。「晟」は10画なんて書いておこうものなら、旧字体の方をデザインしてあるフォントでご覧になっている読者の方から、「11画の間違いじゃないんですか」とご指摘をいただくことになるでしょう。
何千字もの漢字をデザインするのは、たいへんなお仕事だとは思います。しかし、規格票とは画数が違ってしまうようなデザイン差は、起きないように注意してほしいものです。