以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0241
「薇」の「くさかんむり」を除いた部分と、「微」とは、ちょっと字体が違いますね。なぜですか?
A
「薇」はいわゆる形声文字で、意味を表す「くさかんむり」と、発音を表す「微」とから成り立っています。そこで、「薇」から「くさかんむり」を除いた部分は、「微」と同じでなければならないはずですが、一般に使われている字体では、たしかにちょっと違っています。不思議に思うのも当然です。
現在、私たちが使っている字体の基準となっているのは、これまでも何度か取り上げた『康熙字典』です。そこで、この本で「微」を調べてみると、図のような字体をしていることがわかります。なんだか、ここでも私たちの知っている「微」とは、ちょっと違いますね。私たちの知っている字体で「π」のようになっている部分が、「一」と「儿」に分かれているのです。
実はこの「微」は、当用漢字が制定されたときに、字体が変更された字の1つなのです。どうしてこのような微妙な変更を行ったのかはわかりませんが、『康熙字典』の字体は旧字体、私たちの知っている「微」は新字体、ということになるのです。
さて、一方の「薇」を『康熙字典』で調べてみると、図のような字体であることがわかります。「くさかんむり」の間が切れているなどのわずかな違いはあるものの、パソコンで入力して出てくる「薇」とほぼ同じです。この漢字は、当用漢字やそれが改定された常用漢字には入っていないので、字体が変更されることがありませんでした。その結果、「微」と「薇」とは、字体が微妙に違うことになった、というわけです。
ちなみに、この『康熙字典』の「薇」を、先に掲げた『康熙字典』の「微」と比べてみると、やはり、一致していない部分があります。先に「一」と「儿」に分かれていると指摘した部分が、こんどは「一」と「几」に分かれているのです。これは、『康熙字典』のミスだとされています。
どんな辞書にも、ミスはあるものなのです。