当館では、『大漢和辞典』を始めとする漢和辞典を発行する大修館書店が、漢字や漢詩・漢文などに関するさまざまな情報を提供していきます。

漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0179
「贔屓(ひいき)」という熟語は中国語にはないそうですが、もともとどういう意味なのでしょうか?

A

このことばを『大漢和辞典』で調べてみますと、1番目に「力を用いるさま」という意味を掲げ、2番目は「大きい亀」、3番目に「目をかける」という説明になっています。私たちが現在つかっている「ひいき」の意味はこの3番目になります。
そこで、もう少し詳しく3番目の意味をみると、「翠雨軒詩話(すいうけんしわ)」という本と、「尺素往来(せきそおうらい)」という本からの用例が挙がっています。ところが、この2つの本は、ともに日本で書かれた本なのです。このことからすると、中国語に「贔屓」という熟語がないわけではありませんが、それは私たちが現在使っている意味とは違うのではないかと思われます。
ただし、小学館の『日本国語大辞典』によると、平安時代の末期(12世紀の終わりごろ)に書かれた『色葉字類抄(いろはじるいしょう)』という辞書には、「贔屓」に対して「ヒイキチカラオコシ」という記述があるそうです。これから判断すると、このことばは日本でももともとは「力を用いるさま」という意味で用いられていたのではないかと思われます。それが時代とともに、「片方にだけ力を用いるさま」という意味で使われるようになり、「目をかける」という意味に変化していったのでしょう。この意味での用例は、同じく『日本国語大辞典』によると、14世紀には現れてくるようです。

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