Q0526
子どもの名前に使える漢字はどのような読み方をしてもよいのでしょうか?
A
子どもの名づけに用いることを許される字の範囲は、戸籍法第50条の「子の名には、常用平易な文字を用いなければならない。常用平易な文字の範囲は、法務省令でこれを定める。」とされ、戸籍法施行規則第60条によって具体的に定められています。ところが、個々の字の読みと名前の長さについてはなんら規則、制限がありません。出生届には子の氏名の「よみかた欄」がありますが、これは戸籍には記載されません。要するに戸籍では読みは求められていないのです。そのためか、届け出後の読みの変更手続きは書類の提出だけですむという簡単なものとなっています。
ただし、一般の常識から極端に逸脱し、子の将来に悪い影響をあたえる恐れのある名前の読みは、出生届の際に市区町村役場の窓口でチェックされ、注意を受けて再考・再提出を求められることがあります。「読みは自由」といっても、名前に用いる子の読みは、その字の音、訓、名乗りにそったものにしたほうが、社会生活上好ましいと思われます。いうまでもなく、名づけられた子どもの将来の幸福を思えば、一般的に読み方のわからないような読みは避けたほうが賢明でしょう。たとえば、『新漢語林 第二版』(小社刊)など漢和辞典でよく字義を調べ、その意味からはみだしたような読みはさけたいものです。漢和辞典の「名前」「名付」などの欄には、人名に用いられたときのさまざまな読み方(名乗り)が例示されているのでそれを参考にしてもよいでしょう。
日本語学習中の中国の友人によくいわれることですが、日本人の名はどのように読んだらよいのかまったく見当がつかずほんとうに困ってしまうそうです。同じ漢字を使っていても、字義からみても想像できない読みに出会って、とまどうことが多くあるようです。中国人にとっては、とくに訓による読みはむずかしいことが理解できます。そのために中国では日本人の名前の読みを集めた辞書が出版されています。最近では、我々日本人でもまったく見当がつかない読みに出会うことがたびたびあります。振り仮名をつければ問題はないという意見もありますが、「自由」とはいえ、なるべく平易な読みを選択したいところです。(舩越國昭)