以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0131
「看護シ」のように職業に使われるシという漢字には、「師」と「士」の2つがあるようですが、使い分けがあるのでしょうか?
A
2002年3月、それまで「保健婦助産婦看護婦法」という名前だった法律が、改定に伴って「保健師助産師看護師法」という名前に変更になりました。「保健師」「助産師」「看護師」という漢字が公に用いられるようになったのは、おそらくこれが始めてなのではないかと思います。
ではそれ以前はどうだったかというと、男性は「看護士」、女性は「看護婦」というように使い分けられていたようです。つまり「師」の場合は性別は問わず、「士」の場合には男性のみを指す、ということになります。
この2つの漢字本来の意味を考えても、この使い分けは正しいと思われます。「師」の方は、もともとは軍隊という意味の漢字で、転じて軍隊の指揮官、さらに転じて指導者一般を表すようになりました。一方、「士」の方は、字源的には男性が持つ武器の形だともいいますし、男性の象徴の形(!)だという説もあります。いずれにしろ、もともと男性を表す漢字であったことに間違いはありません。
法律が改定されて、「師」が用いられるようになったのは、もちろん男女平等という観点からのことでしょう。それを考えますと「歯科衛生士」は「歯科衛生師」に、「弁護士」は「弁護師」になってもよさそうなものですが、さすがに慣用が定着しているものは変えにくかったのか、それとも「歯科衛生婦」や「弁護婦」ということばはないので問題なし、ということなのでしょうか。
弁護士の世界は女性には狭き門、というわけではないとは思いますが……。