以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0128
「鼻血」はひらがなで書くと「はなぢ」ですが、「地面」は「じめん」となります。どうしてですか?
A
「鼻血」の場合、「血」の「ち」という読み方が濁って「ぢ」になっているから、「ぢ」と書くのは当然だ、ということは、ほとんどの方が感覚的に理解していることでしょう。とすると「地」の「チ」という読み方が濁ったのだから、「地面」も「ぢめん」と書くべきではないか、と不思議に思うのは、至極もっともな疑問といえましょう。
この謎を解くカギは、「チ」という音にあります。これをわざわざカタカナ書きにしておいたのは、ちゃんと意味があります。そう、「地」の「チ」という音は、実は音読みなのです。これは、「地面」の「メン」が「面」の音読みであることからして、ご理解いただけるのではないしょうか。
漢字の音読みには漢音・呉音というものがあることは、あちこちで触れてきましたが、「地」の場合、漢音がチ、呉音がジなのです。つまり、「地面」の「じ」は、「ち」が濁ったものではなく、もともと濁っている読み方なのです。
現代日本における仮名遣いを定めた文書としては、1986年に内閣告示として出された『現代仮名遣い』があります。この文書の「づ」「ぢ」についての決まりをおおざっぱにまとめると、次のようになります。
1「づ」「ぢ」は原則として用いない。
2「ちぢむ」のように同音が続いた場合に生じるものは、例外とする。
3「はなぢ」のように二つのことばの連合によって生じるものは、例外とする。
4「せかいじ(ぢ)ゅう」のように、二つのことばの連合である意識が現在では薄くなっているものは、「づ・ぢ」「ず・じ」のどちらで書いてもよい。
「地」の呉音「ジ」も、実を言うともともとは「ヂ」と表記される音なのですが、上記の原則には当てはまらないため、「ジ」と書かれることになっている、というわけです。