当館では、『大漢和辞典』を始めとする漢和辞典を発行する大修館書店が、漢字や漢詩・漢文などに関するさまざまな情報を提供していきます。

漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0124
「雪の華」ということばがありますが、厳密にいうと「華」ではなくて「花」が正しいのではないですか?

A

大きな国語辞典を調べると、「雪の花(華)」とは、雪が降る様子を花が散る様子にたとえていうことば、などという説明があります。とすると、たしかに「花」という漢字で十分なような気もします。
そもそも、「花」と「華」の関係はどうなっているのでしょうか。まず、どちらも常用漢字に入っているので、どちらかを使ってはいけない、ということはありません。どちらも音読みはカで、意味は「はな」ですから、異体字の関係なのでしょうか。そう思って漢和辞典を調べると、異体字扱いはされていないことがわかります。
「花」は基本的には、文字通り、植物の「はな」の意味ですが、「華」には、そのほかに「はなやか」「はなばなしい」などの意味があるのです。そして、現代中国語では、「華」の字にも2種類の発音があって、「はな」の場合と「はなやか」「はなばなしい」の場合とでは、微妙に発音が違うのです。
このように見てくると、「花」のイメージはかなり具体的ですが、「華」の方は、具体的な「はな」の他に、抽象的な、比喩的なイメージを併せ持っているように思われます。そこで、「雪の花」と書くよりも「雪の華」と書く方が、はなやかで幻想的な、イメージの広がりがあるのではないでしょうか。もしかすると、「華」の方が画数が多く複雑な形をしていることも、このイメージに「花を添えている」のかもしれません。
国語辞典には出てこないのですが、雪の結晶のことを「雪の華」と呼ぶこともあるようです。この場合も、植物の花に似ていることに加えて、なにか幻想的なイメージを込めて「華」の字が使われているのでしょう。

  • facebookでシェア
  • twitterでシェア