当館では、『大漢和辞典』を始めとする漢和辞典を発行する大修館書店が、漢字や漢詩・漢文などに関するさまざまな情報を提供していきます。

漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0117
ある漢字字典によると「母」の部首も「毎」の部首も、「ははのかん」という同じ部首だと出ていました。前者は点々、後者は一本線で形が違うのに、どうしてですか?

A

漢字の世界には、理路整然としている部分と、いい加減な部分とが混在していて、その両者が肩を並べて座っているようなところがあります。部首にもそのようなところがあって、「木へん」とか「さんずい」とか「くさかんむり」とかいうメジャーな部首の分類は理路整然としているのですが、マイナーな部首は、けっこういい加減なのです。
いま、小社の『新漢語林』で「母」を調べると、「毋」部に所属していることがわかります。そうして、同じ部首に所属する漢字を見ていくと、JIS漢字では他に部首文字の「毋」に加えて、「毎」「毒」「毓」(イク、「育」の異体字)の4つしかありません。これらのうち、「毎」はもともと旧字体では「毋」ではなく「母」と書きますから、「毋」「毒」のグループと、「母」「毎」「毓」のグループの2つに分かれると考えることができます。
さて、ご質問にあったように厳密に考えて、「毋」という部首とは別に「母」という部首を作ってもよいのです。でも、そうしても、JIS漢字内だと前者は2文字、後者は3文字にしかなりません。対象を『大漢和辞典』の5万字まで広げたって、前者は14文字、後者は8文字にしかならないのです。そんな細かい部首を作ってもしかたがない、似たもの同士なんだからいっしょにしてしまえ、ということで、1つ屋根の下に同居している、というのが、「毋」部に関する現状となります。
なお、この「毋」部の名前ですが、一般には、部首文字の「毋」の訓読みを採って「なかれ」と呼んでいます。「ははのかん」という名前もないではないですが、この場合の「かん」はおそらく「貫」のカンでしょう。しかし、「貫」は「貝」部に所属しますので、「ははのかん」だと、部首名と内容が一致しません。「なかれ」の方がよいのではないかと思います。

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