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漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0109
「備」の6画目と7画目の関係は、「厂」のようになっているのが正しいのですか、それとも6画目が横に突き出ているのが正しいのですか?

A

010901ご質問は、図の2つの「備」の違いのことだと思われます。左の方は、6画目の横棒と7画目の縦払いの出発点がほぼ同じで「厂」のようになっていますが、右の方は、6画目の横棒の方が、かなり左から出発しています。
実はこの2つの字形は、左の方が『当用漢字字体表』に示された字形、右の方がいわゆる教科書体で、「学年別漢字配当表」に示された字形なのです。前者は、当用漢字が制定された直後の1949(昭和24)年に示されたもの、後者は、1977(昭和52)年、小学校の教科書で使われる漢字の字形を定める必要上、示されたものです。これらを厳密に解釈するならば、問題の部分に関しては、1977年を境として、基準が変わったといえるでしょう。
しかしそもそも、この部分の相違が、どれほどの問題となるのでしょうか。
010902字源から考えると、「備」という字はもともと図の左側ような形をしていて、この右半分の形、つまり「にんべん」を除いた形は、現在の楷書体に直すと図の右側のような形になります。これは、矢をいれる「えびら」を意味する漢字で、これを人が背負うことが「備」の本来の意味だといわれています。狩りや戦いの準備をする、ということでしょうか。
それはともかくとして、現在の「備」の字形は、すでに本来の字形を変形してできあがったものですから、細かい点について字源的な意味を詮索しても、あまり意味はなさそうです。上に見たように文部省の定める字形に変化があったのも、意味を持って変化させたのではなく、無意識のうちに違うデザインになっていた、ということではないでしょうか。
ご質問の字形の差異は、活字でも、書体によってデザインに違いが生じてくるような部分です。ましてや手書きの場合は、あまりこだわる必要はなさそうです。

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