当館では、『大漢和辞典』を始めとする漢和辞典を発行する大修館書店が、漢字や漢詩・漢文などに関するさまざまな情報を提供していきます。

漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0095
漢字の読みの中で、1番長いのはどんなものですか?

A

いただいたメールによると、このご質問に関しては、インターネット上では次のような情報もあるようです。

走る編に、「駄」という漢字を書く(無理して書くと『走駄』)。これ1文字で、「はしりかたがとてもただしくない」と読む。15文字、最高です。(原文ママ)

そこで早速、『大漢和辞典』を取り出して、「走」(部首としての「走」は「へん」ではなく「にょう」なので、「そうにょう」といいます)のところを探してみたのですが、問題の漢字はみつかりません。例によって8万字以上を収録という『中華字海』にもあたってみましたが、やはりみつかりません。国字を収録したいろいろな辞典をあたってもみたのですが、やはりみつからないのです。
というわけで、いまのところ、「走」にょうに「駄」という漢字の存在は確認できていません。ですから、「はしりかたがとてもただしくない」という訓読みの存在も、確認できないわけです。これも、ネット上によくある、都市伝説の1つなのかもしれません。
では、存在が確認できるもののうちには、どのような長い読みがあるのでしょうか。Q0080でも触れた『大漢和辞典』の字訓索引の中には、たとえば「秀」に対して「はなさいてみのらぬ」とか、「畦」に対して「かみをまつるところ」といった長い「字訓」が付けられています。
しかし、そもそも訓読みというのは、その漢字の意味のことですから、意味を細かく規定しようとすれば、どんどん長くなりえます。こころみに手元にある小社の『新漢語林』を開いてみると、たとえば「抜」のところには、「多くの中から選び出す」という意味があると記されています。これを「おおくのなかからえらびだす」と訓読みにしてしまえば、13文字。「はしりかたがとてもただしくない」には2文字足りませんが、この要領でいけば、20文字を超える「訓読み」を見つけることも可能かもしれません。
漢字の1番長い読み、これは終わりのない問題なのです。

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