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『甲骨文の話』

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甲骨文発見から百二十年。漢字三千年史の萌芽を語る!

 松丸道雄先生の六十余年にわたる甲骨学研究のエッセンスを一冊に凝縮…! 若き日の幻の論文「甲骨文略説」、壮大な歴史研究「殷人の観念世界」、書き下ろし「『甲骨文合集』の刊行とその後の研究」などを収録。

著者メッセージ

 私が、この甲骨学にはじめて手を染めたとき、書店の店頭には、

  董作賓『甲骨学五十年』台北・藝文印書館、一九五五年(元は一九五〇~五一年に『大陸雑誌』に連載)

が並んでいて、私はこの小さな本によって、はじめて甲骨の概要を学んだ。その半世紀後、

  王宇信・楊升南 主編『甲骨学一百年』前出、一九九九年

の大部の書が刊行されたが、それも早や二十年近く前のこととなった。

 私が若かったころのこの史料の研究環境は、いま著しく変わった。『甲骨文合集』刊行前では、一論文作成の資料蒐めのためには、百点を超える甲骨著録書をひと通り頭から点検して摹本(ぼほん)を作成する必要上、東京大学東洋文化研究所、文学部中国哲学研究室、東洋文庫だけでは足りず、京都大学人文科学研究所近くに数日宿泊して通わねばならぬなど苦労があった。ましてコピー機はなく、図書館では概してインクの使用が許されないため、鉛筆でトレースして、夜間そのインキングに没頭した。今昔の感に堪えない。

 本書は、この甲骨学について、関心のある一般読者に分かりやすく解説した小文を蒐めて『あじあブックス』の一書とするよう、書肆から求められたのに応じて、とり纏めてみた書物である……(中略)

  厖大な研究史を持つだけに、決して万遍なく紹介できたわけではないが、かなり専門性の高い分野であるだけに、いま我々が用いている漢字の祖型たる甲骨文とは何か、甲骨学の現況はどうかについての紹介によって、いささかのお役に立つ場合もあろうかと思っている。(「おわりに」より抜粋)

主要目次

 はじめに

Ⅰ 甲骨文略説
はじめに/発見と研究のはじまり/甲骨文の材料・使用法/殷代王室世系の解明/甲骨文の時代決定/字形の変遷/書体と貞人・契刻者との関係/甲骨文字の刻り方/漢字史における位置づけ/おわりに

Ⅱ 甲骨文の話
はじめに/甲骨文の発見/殷のみやこ/王のなまえ/時期区分/字形と書体/占卜の内容・狩猟/占卜の内容・戦争/さらに勉強したい人のために

Ⅲ 殷人の観念世界

Ⅳ 「甲骨文」における「書体」とは何か
問題の所在/董氏断代研究における「書体」論/書契者は誰か/結語

Ⅴ 古文字〝解読〟の方法――甲骨文字はなぜ読めたのか
解読の要件/甲骨文字の性格/金文学の成果/甲骨文字〝解読〟の一例

Ⅵ 甲骨文字のしくみ
甲骨文研究の百年/唐蘭氏の分類/甲骨文特有の造字法

Ⅶ 漢字形成期の字形――甲骨文字〝文字域〟についての試論
はじめに/『甲骨文編』の構造/甲骨文字〝文字域〟とは/〝文字域〟と音韻/今後の課題

Ⅷ 殷代王室の世系
はじめに/殷代王室世系の考定/董作賓氏の断代研究/先王・先妣祭祀の研究/殷王室の構造の解明に向けて

Ⅸ 十二支の「巳」をめぐる奇妙な問題
干支とは/甲骨文の干支/十二支の文字の移動

Ⅹ 漢字起源問題の新展開――山東省鄒平県出土の「丁公陶片」をめぐって
はじめに/記号と文字/丁公陶片の出現/馮時氏の新見解と彝族・彝語・彝文の概略/馮氏説の検討/彝・夷・尸について/龍虬陶片と良渚文化における陶文/山東龍山・良渚両文化の衰退と殷周文化の勃興/おわりに

ⅩⅠ 『甲骨文合集』の刊行とその後の研究

おわりに
原載一覧

著者紹介

松丸道雄(まつまる みちお)

1934年、東京生まれ。東京大学文学部東洋史学科卒業、同大学院人文科学研究科修士課程修了。東京大学東洋文化研究所教授等を歴任。東京大学名誉教授。甲骨金文学・中国古代史。編著書に『西周青銅器とその国家』(東京大学出版会)、『東京大学東洋文化研究所蔵甲骨文字 図版篇』(東京大学東洋文化研究所、東京大学出版会)、『甲骨文字字釈綜覧』(同、共編)、『世界歴史大系 中国史』全5巻(山川出版社、共編)などがある。

※著者紹介の情報は書籍刊行時のものです。

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