当館では、『大漢和辞典』を始めとする漢和辞典を発行する大修館書店が、漢字や漢詩・漢文などに関するさまざまな情報を提供していきます。

漢字Q&A

基本用語集

あ行

異体字(いたいじ)

音読みも意味(訓読み)も同じなのに、字体だけが異なる漢字がいくつか存在する場合、標準的な字体正字に対して、それとは異なる字体のことを「異体字」といいます。たとえば「島」「嶋」「嶌」は、いずれも音読みは「トウ」で意味(訓読み)は「しま」なので、正字の「島」に対して残りの2者は異体字であるということになります。「峰」に対する「峯」なども同様です。世間で一般に「俗字」や「略字」と呼ばれているものは、この「異体字」を指していることが多くあります。

印刷標準字体(いんさつひょうじゅんじたい)

表外漢字字体表(ひょうがいかんじじたいひょう)

音読み(おんよみ)

日本語の中での漢字の読み方のうち、中国語の発音に起源を持つもののこと。「字音(じおん)」ともいいます。その母体となった時代・地域などの違いから、漢音(「行」をコウと読む場合)・呉音(「行」をギョウと読む場合)・唐音(唐宋音ともいいます。「行」をアンと読む場合)に分けるのが一般的ですが、それぞれの音は、その時代・地域の中国語の発音を正確に映しているわけではありません。また、これら以外に、中国語の発音に起源を見いだせない慣用音もあります。なお、「餃子(ぎょうざ)」や「北京(ぺきん)」は、近現代の中国語の発音に基づく読み方です。

か行

会意(かいい)

六書(りくしょ)の1つ。2つ以上の漢字を組み合わせ、その表す意味を合成することによって新しい漢字を作る方法。代表的な例としては、「木」を2つ組み合わせて作られた「林」、「日」と「月」を組み合わせて作られた「明」などがあります。

楷書(かいしょ)

漢字の書体の1つで、現在、私たちが手書きするとき、一般に用いている、崩していない書体のこと。紀元3世紀ごろ(後漢の末)に、隷書の形を整備して、全体が正方形で、筆画が真っ直ぐな書体が工夫されるようになりました。これが楷書の始まりで、以後数百年をかけて、7世紀ころに現在見るような形に完成されました。

拡張新字体(かくちょうしんじたい)

JIS字体(ジスじたい)

仮借(かしゃ)

六書(りくしょ)の1つ。本来、そのことばを表す固有の漢字がなかったので、音の類似した別の漢字を、仮に借りて、そのことばを表すことにしたもの。代表的な例としては、本来、ムギを表す象形の「来」が、「くる」という意味に転用されたというものがあります。

簡易慣用字体(かんいかんようじたい)

表外漢字字体表(ひょうがいかんじじたいひょう)

漢音(かんおん)

8世紀ごろをピークとして、遣唐使や渡来中国人によって伝えられた中国語音にもとづいて、日本語の中に取り込まれた漢字の音読みのこと。これは、主に当時の都・長安(現在の西安)の発音がベースになっていると言われています。平安時代以降、漢音が正当な音読みとされるようになり、現在の私たちが普通に使う音読みの多くは、この漢音を用いています。

慣用音(かんようおん)

漢字の音読みのうち、中国語音にもとづかないものの総称。もとは誤読から生じて定着したものが多いとされています。たとえば「攪拌」(カクハン。かきまぜること)の「攪」という字は、漢音では「コウ」、呉音では「キョウ」と読みますが、右側の「覺」(「覚」の旧字体)の「カク」という音に引きずられて、「カク」という音読みが慣用音として定着しています。

旧字体(きゅうじたい)

第2次世界大戦後の国語改革によって定められた当用漢字が採用した、筆画を減らした簡略な新字体に対して、それ以前に使われていた字体のことをいいます。代表的な例としては「與」「劍」「壽」(新字体はそれぞれ「与」「剣」「寿」)などがあります。ただし、どの字体を旧字体とするかについては揺れも多く、漢和辞典によって異なることもしばしばあります。

教育漢字(きょういくかんじ)

常用漢字のうち、小学校の6年間で学習することが「学習指導要領」の「学年別漢字配当表」で定められている漢字。現在では1006字あります。その一覧表をご覧になりたい方は、当資料館「読みもの」内の漢字文化アーカイブへどうぞ。

金文(きんぶん)

test_a漢字の書体の1つ。中国古代、紀元前10~8世紀ごろ(殷・周王朝の時代)を中心として、青銅器などに鋳込まれたもの。石碑などに刻まれたものと併せて金石文(きんせきぶん)とも呼ばれます。甲骨文字に次いで古い時代の漢字とされています。図に掲げたのは、「馬」の金文です。漢字の変遷を解説した書籍に、小社刊・阿辻哲次著『図説 漢字の歴史』があります。

訓読み(くんよみ)

 日本語の中での漢字の読み方のうち、その漢字の意味する内容を日本語に置き換えたところから発生したもの。「字訓(じくん)」ともいいます。「大」を「おおきい」と読んだり、「修」を「おさめる」と読んだりするのは、中国語で「大」や「修」が表している意味内容を、日本語に置き換えたところから始まっています。その意味では、訓読みは一種の翻訳であるともいえます。古い時代には、1つの漢字にいろいろな翻訳がこころみられたため、訓読みの数も膨大でしたが、次第に淘汰され、現在私たちが知っている訓読みへと整理されてきました。しかし、ある読み方が訓読みであるかどうかは、主として慣用によって判断するしかなく、そのため、漢和辞典では「訓読み」ということばはあまり使わず「字義」「意味」などという呼び方をするのが一般的です。

形声(けいせい)

六書(りくしょ)の1つ。2つの漢字を、意味を表す「意符(いふ。義符(ぎふ)とも言います)」と、音を表す「音符(おんぷ。声符(せいふ)とも言います)」として組み合わせて、新しい漢字を作る方法。代表的な例としては、意符「水」と音符「可」を組み合わせて作られた「河」、意符「水」と音符「工」を組み合わせて作られた「江」などがあります(「さんずい」は「水」の変形)。

康熙字典(こうきじてん)

 1716年、時の中国皇帝・康熙帝の命令に従って完成された、漢字の辞典。収録字数は49,030字。中国歴代の漢字辞典を集大成したとされています。現在においても、『康熙字典』で正字とされている字体を原則として正字とみなしたり、部首分類は原則として『康熙字典』を踏襲するなど、その規範性は失われていません。

甲骨文字(こうこつもじ)

yogo02漢字の書体の1つで、現在知られているうちでは最も古いもの。紀元前14世紀~11世紀ごろにかけて、主に占いのために、亀の甲羅や動物の骨に刻みつけられたことから、この名前があります。図に掲げたのは、「馬」の甲骨文字です。長い間、その存在は知られていませんでしたが、1899年、ある学者が漢方薬として売られていた「竜の骨」に文字のようなものが刻み付けられているのに気が付いたことから、その存在が明るみに出たとされています。漢字の変遷を解説した書籍に、小社刊・阿辻哲次著『図説 漢字の歴史』があります。

呉音(ごおん)

5~6世紀ごろ、中国の長江下流域で話されていた漢字の音にもとづいて、日本語の中に取り入れられた漢字の音読み。8世紀になって、中国の長安(現在の西安)地方で話されていた漢字の音が「漢音」として入ってくる以前には、この音が漢字の音読みの主流でした。現在でも、「極楽」を「キョクラク」ではなく「ゴクラク」と読むように仏教用語によく用いられるほか、「人間」を「ジンカン」ではなく「ニンゲン」と読むなど、古くから日常生活に溶け込んだ漢語にも、呉音で読むものが多くあります。

国字(こくじ)

「漢字」とは、もともと中国で作られた文字であるのに対して、日本で作られた漢字を「国字」といいます。よく知られた国字としては、「辻」「畑」「峠」などがあります。また、ひらがなやカタカナを含めて、日本で独自に考案された文字、という意味で「国字」と呼ぶ場合もあります。さらに一般化して、ある国で、その国のことばを書き表すために公的に採用している文字を「国字」と呼ぶ場合があります。

国訓(こっくん)

ある漢字が本来、中国語として持っていた意味からは外れて、日本人が独自に用いるようになった意味のこと。たとえば「沖」は本来、「水が湧く」とか「むなしい」といった意味を表す漢字ですが、日本人は「おき」という意味で用いています。また、「鮎」は中国語としてはナマズを表していますが、日本ではアユを表す漢字として用いています。

さ行

字音(じおん)

音読み(おんよみ)

字訓(じくん)

訓読み(くんよみ)

指事(しじ)

六書(りくしょ)の1つ。抽象的な概念などを線や点画などの符号によって関係的に表現したもの。たとえば「うえ」という抽象的な概念を表すために、横棒を引いてその上側に印を付けた「上」や、同様の発想「下」などが代表的な例です。他にも、木の上の方を表す「未」、下の方を表す「末」などがあります。

JIS漢字(ジスかんじ)

日本のコンピュータで扱うことができる漢字のこと。一般に、文字をコンピュータで扱うためには、各文字に対してコード(番号)を振っておく必要があります。この「文字とコードの関係」を統一規格にしたものが、JIS漢字コードと呼ばれるもので、そこに含まれている漢字をJIS漢字と呼んでいます。現在、JIS漢字コードには、一般によく使われている「第1・第2水準」(6355字)と、「第3・第4水準」(3695字)、「補助漢字」(5801字)の3つのグループがあります(「第3・第4水準」と「補助漢字」は約2900字が重複)。これら全てを合わせると、コンピュータで扱える漢字は、約1万3000字ということになります。

JIS字体(ジスじたい)

JIS漢字には、それまで俗字略字とされていた多くの字体が、コンピュータで扱える漢字として採用されました。これらをJIS字体と呼んでいます。JIS漢字の第1・第2水準が制定された際、JIS字体の中には、「篭」(「籠」の略字)や「撹」(「攪」の略字)のように、本来の字体もJIS漢字に含まれているものもありましたが、「鴎」(本来は「区」が「區」)や「涜」(本来は「売」が「賣」)のように、本来の字体がJIS漢字に含まれていないものもありました。これらの俗字や略字が、それまで印刷に用いられていた字体と異なっていたことは、字体の混乱を生み、その解決のために、国語審議会が「表外漢字字体表」を答申するに至っています。また、JIS補助漢字や第3・第4水準の漢字が制定され、「鴎」や「涜」の本来の字体もJIS漢字に含まれるようになりました。なお、JIS字体は、新字体を拡張したものという意味で、「拡張新字体」と呼ばれることもあります。

重箱読み(じゅうばこよみ)

2文字からなる漢字熟語を、1文字めを音読みで、2文字めを訓読みで読む読み方。「縁側」「台所」「本屋」「蜜蜂」など。逆に1文字めを訓読みで、2文字めを音読みで読む読み方を「湯桶読み」といいます。

熟字訓(じゅくじくん)

2文字以上からなる漢字熟語を、日本語1語で読む読み方。たとえば、「薔薇」という漢字熟語は、本来、ソウビ・ショウビという音読みがありますが、これを日本語の「ばら」1語で読むのが、熟字訓です。「熟字」とは、「熟語」と同じ意味。ふつう訓読みといえば、漢字1字に対するものですが、2文字以上にまとめて訓読みを当てる場合は、熟語に対する訓読みという意味で、熟字訓と呼びます。

象形(しょうけい)

六書の1つ。「形に象(かたど)る」という意味で、物の形を簡略化して絵画的に表現したもの。代表的な例としては、「日」「月」「山」「川」などがあります。

常用漢字(じょうようかんじ)

1981(昭和56)年に定められ、2010(平成22)年に改定された「常用漢字表」に掲載されている漢字のこと。この表は、一般の社会生活で、読みやすくてわかりやすい現代日本語を書き表すための目安として、「当用漢字表」を改定して定められたもので、全部で2136字の漢字が収録されています。当用漢字は漢字の使用を制限することを目的として定められたのに対し、常用漢字はあくまで「目安」であるという点に、両者の性格の違いがあります。

新字体(しんじたい)

第2次世界大戦後の国語改革によって当用漢字が定められた際、「当用漢字字体表」で採用された、筆画を減らした簡略な字体のことを言います。たとえば「經」の新字体は「経」、「國」の新字体は「国」となりました。これらの字体の中には、それ以前から略字として使用されていた字体が数多く含まれています。現在の日本では、漢字表記にはこの新字体を使うのが普通ですが、人名や地名などの固有名詞などの中には、当用漢字制定以前の旧字体を使う場合もあります。

人名用漢字(じんめいようかんじ)

戸籍法第50条で定められた、戸籍上の名前に用いることができるとされている「常用平易な文字」のうち、常用漢字以外の漢字のこと。1951(昭和26)年に初めて制定された後、1976(昭和51)年、1981(昭和56)年、1990(平成2)年、1997(平成9)年と改定がなされ、さらに2004(平成16)年に抜本的な改定が加えられて、その数は983字となりました。その後、2009(平成21)年の改定、2010(平成22)年の常用漢字の改定に伴って861字となり、2015(平成27)年1月に1字追加されました。従って、2015年1月現在では、常用漢字2136字と合わせて、2998字の使用が認められていることになります。なお、人名用漢字は、「人名漢字」と呼ばれることもあります。

正字(せいじ)

音読みも意味(訓読み)も同じなのに、字体だけが違う漢字がいくつかある場合、その中でも標準的な字体だと考えられるものを「正字」と呼びます。たとえば、「島」「嶋」「嶌」のグループの中では、「島」が正字とされます。ただし、どれが標準的であるかという判断には、時代や考え方によっても違いがでてきます。現在の日本では、常用漢字に含まれるものは「常用漢字表」の字体を、それ以外は、原則として『康熙字典』が正字体としている字体をそのまま正字体とするのが普通ですが、1字1字について細かく検討していくと、例外も多くあります。

説文解字(せつもんかいじ)

 西暦100年ごろ、後漢の許慎(きょしん)という人が著した字書。9,353字の漢字を、540の部首に分け、各漢字の字義や、字形の構造などを説明しています。この書で初めて、部首による漢字の分類が行われ、後世の字書に大きな影響を与えました。中国文字学の基本図書の1つとされています。略して『説文』(せつもん)とも呼ばれることもあります。解説書として小社刊・頼惟勤監修・説文会編『説文入門』があります。

俗字(ぞくじ)

辞典や行政文書など公式な場で用いられてきた標準的な字体を正字と呼ぶのに対し、主に世間一般で用いられてきたとされる異体字のことを「俗字」と言います。たとえば正字「崎」に対して、「嵜」は俗字ということになります。いわゆる略字も、多くはこの俗字に含まれます。ただし、人名などに現れる異体字を「俗」という捉え方をするのはよくないと考えるむきもあることから、現在では「俗字」という呼び方は、だんだんされなくなりつつあります。

た行

大漢和辞典(だいかんわじてん)

小社が発行する、世界最大の漢和辞典。収録親字数は5万、収録語彙数は53万、全15巻という空前の規模を誇っています。著者は諸橋轍次(もろはしてつじ)博士。昭和初年に編纂を開始して以来、4分の3世紀にわたる苦難に満ちた編纂作業の結果、現在の形に至っています。もっと詳しくお知りになりたい方は、当資料館の『大漢和辞典』記念室へどうぞ。

転注(てんちゅう)

六書(りくしょ)の1つ。その解釈には複数の説があり、一定していません。その1つは、ある漢字を、その意義の関連する別のことばに転用していく方法とするもので、代表的なものとしては、もと鈴の象形で「音楽」の意味を表した「楽」が、「たのしい」の意味を表すことばも表すようになった例があります。

篆文(てんぶん)

yogo03漢字の書体の1つ。「篆書(てんしょ)」ともいいます。紀元前221年、秦(しん)の始皇帝(しこうてい)が中国を統一したとき、それ以前に秦で使っていた「大篆(だいてん)」という書体に、征服した各国でさまざまに使われていた書体の長所を加えて新たに「小篆(しょうてん)」という書体を作成し、それを統一書体としました。一般に、この「小篆」のことを「篆文」と呼んでいます。図に掲げたのは、「馬」の篆文です。現在でも、印鑑などの書体として使われることがあります。漢字の変遷について解説した書籍に、小社刊・阿辻哲次著『図説 漢字の世界』があります。

唐音(とうおん)

呉音漢音より後、平安時代の中ごろ(10世紀ごろ)から江戸時代の末(19世紀)までの長い期間に渡って、日本語の中に取り入れられていった漢字の音読み。「唐宋音」(とうそうおん)とも言います。「唐」とか「宋」とか王朝名を冠にしていますが、時代的にも地域的にもさまざまな中国語の音をベースにしています。「椅子」を「キシ」ではなく「イス」と読んだり、「蒲団」を「ホダン」と読まずに「フトン」と読んだりするなど、身近なところにもその例は意外とあります。

当用漢字(とうようかんじ)

第2次世界大戦後、1946(昭和21)年に国語改革の一環として定められた、「当用漢字表」に収録されている漢字のこと。一般の社会生活での漢字の使用を制限する目的で定められたもので、全部で1850字ありました。1948(昭和23)年には「当用漢字音訓表」が定められ、当用漢字の音読み・訓読みが制限され、翌年には「当用漢字字体表」によって、当用漢字の字体は、簡略化した新字体とすることが定められました。しかし、漢字を制限することには各方面からの反発も多く、その後、1981(昭和56)年になって、制限色の薄まった「常用漢字表」が定められ、当用漢字は改定されて常用漢字となり、さらに2010(平成22)年に改定されて、現在に至っています。

な行

名乗(なのり)

漢字の中には、日本人の名前に用いられたときに特別な読み方をするものがあります。そのような読み方のことを「名乗」といいます。字によっては名乗の種類は非常に多く、たとえば小社の『新漢語林 第二版』の「一」の項では、名前に使われる読み方として、「い・いち・いつ・おさむ・か・かず・かた・かつ・くに・すすむ・ただ・ち・のぶ・はじむ・はじめ・ひ・ひさ・ひじ・ひで・ひと・ひとし・まこと・まさ・まさし・もと」を掲載していますが、これらのほとんどは「名乗」です。名乗の存在は、日本人の名前の読み方を複雑にしている一因であるかもしれません。

は行

表外漢字字体表(ひょうがいかんじじたいひょう)

主にJIS漢字によって生じた字体の混乱を解決するため、2000年12月に国語審議会(現・文化審議会国語部会)が答申した字体表。「表外漢字」とは、「常用漢字表」に収められたもの以外の漢字という意味ですが、実際には、2000年当時の人名用漢字も対象外としていいます。この表では、それらの漢字のうち約1000字について、印刷する際の標準とすべき「印刷標準字体」と、使ってもよい「簡易慣用字体」を定めています。実物は、文化庁のホームページの「国語施策情報システム」内の第22期国語審議会の記録でご覧になれますが、小社漢和辞典『新漢語林 第二版』では、本文・索引の中で印刷標準字体・簡易慣用字体の表示を行っていて、便利です。

部首(ぶしゅ)

主に漢字の辞典で用いられる漢字の分類方法を「部首法」といい、この分類方法においてある漢字が所属するグループのことを「部首」といいます。紀元100年ころに作られた『説文解字』という辞典では、ある漢字を構成する要素のうち、意味的に一番重要な役割を果たしている要素に従って漢字を540の部に分類しました。これが部首法の始まりで、「部首」とは、もともと、この540の部の最初(首)に置かれた漢字のことを指していました。以後、この分類方法はさまざまな改善が加えられながら発展し、現在、日本の漢和辞典では『康熙字典』に基づいた214の部首によって漢字を分類するのが一般的です。ただし、漢字の検索に便利なように、漢和辞典によって独自の部首を立てていたり、ある漢字を伝統的な部首とは違う部首に分類したりすることもあり、部首は必ずしも一定していないのが現状です。

ま行

や行

湯桶読み(ゆとうよみ)

2文字からなる漢字熟語を、1文字めを訓読みで、2文字めを音読みで読む読み方。「相性」「手本」「荷物」「身分」など。逆に1文字めを音読みで、2文字めを訓読みで読む読み方を「重箱読み」といいます。

ら行

六書(りくしょ)

漢字を、その成り立ちと分類とから6種類に分類する方法。具体的には、象形(しょうけい)・指事(しじ)・会意(かいい)・形声(けいせい)・転注(てんちゅう)・仮借(かしゃ)の6つ。紀元1世紀ごろの学者・許慎(きょしん)が、中国最古の字書『説文解字(せつもんかいじ)』で行った分類法。以来、現在に至るまで、漢字の成り立ちの研究の基本的な概念とされています。

略字(りゃくじ)

正字の筆画の一部を省略したり、字を構成する一部分を音読みはそのままでより簡略な漢字に置き換えたりした異体字。「蠣」に対する「蛎」などがこれにあたります。

隷書(れいしょ)

yogo04漢字の書体の1つ。秦(しん)の始皇帝(しこうてい)が定めた「篆文(てんぶん)」は、曲がりくねっていて実用上は不便であったため、これを直線的にして簡略化し、速記に便利なように工夫したものが「隷書」です。図に掲げたのは、「馬」の隷書です。速く書き記すことが必要とされる行政文書などには、主にこの書体が用いられたとされています。漢字の変遷を解説した書籍に、小社刊・阿辻哲次著『図説 漢字の世界』があります。

わ行