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新刊特集

新刊紹介

『三国志事典』

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三国志研究の第一人者による初の総合事典!

 
 『三国志』を読み、学び、楽しむための情報が詰まった事典。正史『三国志』に伝のある人物440人全員についての解説をはじめ、名場面、三国時代の歴史・文化・宗教など、基本事項を網羅。また、邪馬台国や卑弥呼でおなじみの「魏志倭人伝」の原文も返り点付きで全文を掲載し、解説。索引や年表、資料類も完備。

著者メッセージ

  『三国志事典』を出版したいという思いは、昔から抱いていました。『三国志研究要覧』を出版した1996年、『三国志研究入門』を出版した2007年には、とくに強く思いました。この『三国志事典』を刊行するのが、2017年ですから、すでに20年も経ってしまったことになります。
 出版に踏み切れなかったのは、「事典」という言葉の持つ客観性にあります。ご承知のとおり、『三国志』、とりわけ「魏志倭人伝」は異説の多い学問分野です。議論百出の中に客観的に「正しい」事典を執筆する、という行為にたじろいでいた訳です。2001年から出版を始めた『全譯後漢書』(全十九巻)は、2016年にようやく完成しました。2017年からは、『全譯三国志』に取りかかるつもりですが、完成までには多くの歳月が掛かることでしょう。また、たとえ全訳が完成したとしても、客観的な事典が書けるほど、すべての問題を解決して、「正しい」三国志の姿を示せるとは思いません。
 それなら、主観的な「事典」を書けばよいではないか、と踏ん切りがついたのは、『三国政権の構造と「名士」』(2004年)で扱うことのできなかった倭国を含めた国際関係を『三国志よりみた邪馬台国』(2015年)として、自分なりにまとめることができたためです。主観的であることを貫くために、『三国志事典』は、すべての項目を一人で執筆しました。校正をしながら、一人の三国志学者が理解する「三国志」の姿を自分なりに示すことができたのではないか、と考えております。
 (『漢文教室 203号』p. 19より転載)

主要目次

第Ⅰ章 正史『三国志』

  陳寿の生涯/正史『三国志』の成立/裴松之注/『後漢書』について/『晉書』について/三国時代とは/『三国志』物語の派生

第Ⅱ章 魏の歴史と人物

  魏の歴史概略/魏の人物小伝

第Ⅲ章 蜀の歴史と人物

  蜀の歴史概略/蜀の人物小伝

第Ⅳ章 呉の歴史と人物

  呉の歴史概略/呉の人物小伝

第Ⅴ章 後漢書・晉書の人物

  後漢末の歴史概略/後漢末の人物小伝/西晉の歴史概略/西晉の人物小伝

第Ⅵ章 名場面四十選

  ①乱世の姦雄/②鞭打つ劉備/③孫堅の神秘的出生/④董卓専横/⑤曹操の大義/⑥孫堅と袁術/⑦天下の英雄は君と私である/⑧袁紹の覇権/⑨関羽の義/⑩江東を託す/⑪荀彧の分析/⑫髀肉の嘆/⑬三顧の礼/⑭草廬対/⑮君臣水魚の交わり/……/㉞曹操の華北統一/㉟赤壁の戦い/……

第Ⅶ章 思想と文学

  儒教一尊から四学三教へ

第Ⅷ章 魏志倭人伝と国際関係

  「魏志倭人伝」を生んだ国際関係/「魏志倭人伝」に見える倭国の虚と実

第Ⅸ章 資料集

  各時代の勢力全体図/三国年表/官職一覧/裴松之引用書一覧/基本用語集

人名索引・事項索引

 

著者紹介

渡邉 義浩 (わたなべ よしひろ)

1962年生まれ。筑波大学大学院博士課程歴史・人類学研究科史学専攻修了。早稲田大学文学学術院教授。専攻は中国古代思想史。文学博士。著書に『三国志―演義から正史、そして史実へ』(中公新書)、『「三国志」の政治と思想』(講談社選書メチエ)、『王莽 改革者の孤独』(大修館書店)、『全譯後漢書』(主編、汲古書院)など。映画『レッドクリフ』日本語版監修者。

※著者紹介の情報は書籍刊行時のものです。

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