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新刊特集

新刊紹介

『いきと風流―日本人の生き方と生活の美学』

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日本人が美しいと思う「生き方」「生活」とは――?

古来、日本人が追求してきた「生き方・生活の美学」を、「みやび」「数寄」「わび」「いき」「風流」といった言葉に着目しながら、古代から近世の文芸・茶道・行事・風俗などの日本文化に即して解きあかす。

著者メッセージ

 本書は日本に「風流」という言葉が中国から輸入されたばかりの時代から、「いき」が発明される江戸末期までの、生活上の「美学」を調べたものである。このような「美学」が生まれたのは、人間が文明化することを望んだからである。

 文明とは野蛮の反対である。そして自己の功利のみを基準として生きる者を野蛮人とみなすとき、これと最も遠いものとして倫理と美(そして信仰)を基準にする生き方が発明される。ただ倫理的判断は、人間として何が正しいかという普遍的基準にてらして、理性的思考を経て結論される。これに対し美的判断は、感性的な直感による。正確に言えば、判断する以前に、私たちは他人の行為や物の外見を見たとき、ほとんど反射的に、つまり思考を経ない身体反応のように、それが「きれい」か「きたない」かを感じてしまう。まるで痛みやかゆみを感じるように。このためか、美的判断に従う生き方はこれまでまじめに研究されてこなかった。正しく生きるためには、感情に従うのは危険であり、理性的に判断しなければならない。感性の喜びを重視する生き方を選ぶことは、合理性とか善悪とかを基準にすることに比べて、愚かであるとみなされてきたのだ。

 これにはっきりと異議を唱えたのは本居宣長である。桜の木を切って薪にすれば役に立つのに、人はただ花を見るために桜を植える。宣長はここに人間の本性をみる。人は実用性や善悪だけを基準として生きるわけではない。美もまた重要な基準の一つなのだというわけだ。生活の環境から衣服や道具まで、私たちは選択に美的基準をもちだす。また生き方のスタイルについても、善悪だけでなく美を基準に「きれい」とか「きたない」とか言う。たとえ善行であっても、やり方が「きたない」と思えば嫌悪する。よいか悪いかはともかく、これが私たちの現実である。この生活上の基準を現代日本ではしばしば「美学」と呼ぶ習慣がある。本書はこの生活の(あるいは人生の)「美学」を過去の日本に探してみようという試みである。 (「あとがき」より)

主要目次

序 生活の美学――生き方のスタイル、生活のデザイン

 Ⅰ 王朝の文雅
1 額田王の贈答歌
2 和歌の舞台――時と所
3 大悪天皇
4 文雅と遊宴

Ⅱ 万葉集の風流
1 中国の風流と好色
2 『万葉集』の「風流」
3 歌の母
4 松浦の仙女

Ⅲ 宮廷の「みやび」と「すき」
1 風流からみやびへ
2 「雅俗」と古典主義
3 『伊勢物語』の「みやび」
4 「美の礼拝」と色好み
5 「すき者」と好色

Ⅳ 数寄と道
1 歌人たちの花見
2 後鳥羽院の花見
3 定家の不機嫌
4 後鳥羽院の数寄生活
5 数寄と道

Ⅴ 婆娑羅の風流
1 佐々木道誉の風流
2 婆娑羅の花見
3 古典文化と輸入された文化
4 遊宴の茶会
5 茶数寄の条件

Ⅵ 隠者の侘数寄
1 禅林の茶と岡倉天心
2 嵯峨天皇と納涼の宴
3 ゲームとしての茶の湯
4 隠者の遊び

Ⅶ 雅の風流と俗の風流
1 煎茶の清風
2 清貧と清福
3 風流の世俗化
4 雅人と俗物
5 風流の条件

Ⅷ 「いき」と「すい」
1 江戸の「意気」と上方の「粋」
2 丹前と男伊達
3 「通」と「すい」
4 「いき」の意味の拡張

Ⅸ 「いき」の美学
1 「出ず入らず」――美の追求の忌避
2 「半可通」と「野暮」――「恥」の文化
3 「いき」の表と裏――二重構造のしかけ
4 幽玄――想像された美
5 「くずす」と「外す」――不完全の美学
6 「いき」と「婀娜(あだ)」――美女の基準
7 美の革命――「雅」から「いき」へ

参考文献
あとがき

著者紹介

尼ヶ﨑彬 (あまがさき あきら)

1947年愛媛県生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了(美学芸術学専攻)。東京大学助手、学習院女子短期大学助教授・同教授を経て、学習院女子大学教授。美学、舞踊学。  
著書に、『花鳥の使』(勁草書房、1983年)、『日本のレトリック』(筑摩書房、1988年)、『ことばと身体』(勁草書房、1990年)、『縁の美学』(勁草書房、1995年)、『ダンス・クリティーク』(勁草書房、2004年)、『近代詩の誕生』(大修館書店、2011年)など。

※著者紹介の情報は書籍刊行時のものです。

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