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漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0374
「素敵」という熟語には、どうして「敵」という漢字が使われているのですか?

A

「素」という漢字は、「素顔」「素手」「素材」のように「もとのままで、手を加えない」という意味で使われます。それが「素敵」となると「もとのままの敵」となって、なんのことやら意味不明、混乱するのももっともです。
「すてき」は、江戸時代も後半になってから使われ始めたことばですが、その語源は、「すばらしい」の「す」に「的」がついたもの、という説が有力です。と言われてもピンと来ない人も多いでしょうが、江戸の終わりから明治にかけての時期には、泥棒のことを「泥的」、官僚のことを「官的」というような俗語があって、それと似たような用い方をされたものなのでしょう。
となると「すてき」とは「す的」なのであって、「素敵」は当て字だ、ということになります。事実、「すばらしい」を「素晴らしい」と書くことから生じたのでしょうか、「すてき」を「素的」と書く書き表し方もあって、昔はこちらの方が「素敵」よりも優勢だったといいます。つまり、「素敵」に「敵」が使われているのには、きちんとした理由は全くない、ということになるのです。
ただし、現在では「素的」はほとんど使われません。そこで、「素的」はなぜ「素敵」にとって代わられたのか?という疑問が生じてきます。その答えはわかりませんが、結果として「ぜいたくは素敵だ」「大胆素敵」などといったことば遊びの名作(?)が生まれたことを考えると、そこには、日本人のステキな遊び心が働いていたのかもしれません。

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