当館では、『大漢和辞典』を始めとする漢和辞典を発行する大修館書店が、漢字や漢詩・漢文などに関するさまざまな情報を提供していきます。

漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0238
「酒」の部首はどうして「さんずい」ではなく「酉」なのですか?

A

もっともな疑問ですよねえ。私だってこの仕事に就く前は、「さんずい」が部首だと思っていました。
しかし、以前にもご説明したように、部首というのはもともと、漢字の意味分類の方法だったのです。従って、ある漢字の部首を考えるときには、その漢字の意味に注意を払う必要があるのです。
そこで問題の「酒」ですが、これが「さけ」という意味であることは間違いのないところです。お酒はたいてい液体ですから、意味から考えても「さんずい(水の変形)」が部首であってもおかしくありません。どうして「酉」が部首なのか、ますますわからなくなってきそうです。
この謎を解くためには、「酉」について考える必要があります。この部首は「とりへん」とか「ひよみのとり」とかいう名前で呼ぶので、なんとなく鳥と関係がありそうな気がしますが、それは「酉」がたまたま十二支で「とり」と読むからだけのことです。もともとは、この字はなんと、お酒をいれる容器を表す象形文字だったのです!
そんなわけですから、「酉」が付く漢字は、お酒にまつわる意味を表すものが多いのです。「酌」「酔」は当然のこと。「酢」「酪」「酵」なども、お酒と同様に何かを人為的に醗酵させて作るものを表している、というわけです。この事情を知っていれば、「酒」の部首を「酉」にしていることもうなずけることでしょう。お酒は水よりも濃いのです。
漢和辞典の仕事を通じてこのことに気づいて以来、私は「酉」の字を見るたびに、徳利の形を連想するようになりました。いや、連想というよりは、この字が徳利そのものに見えてくるのです。
というわけで、今日もそろそろいい時間。しがらみの多い会社をひけて、どこかで静かに一杯傾けるとしましょうか。

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