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漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0237
「木」が「黄」色くてどうして「横」なのですか?

A

小学生でも知っているようなごくごくありふれた漢字が、よくよく眺めてみると不思議な形をしていることがあります。「横」もその1つ。こういう不思議を発見することは、漢字の楽しさの1つです。
しかし、「横」がどうして「よこ」という意味なのか、については、なかなかすっきりとした解釈が見つからないのです。そもそも「黄」がなぜyellowを表すのかにすら、定説があるわけではないのです。
023701「黄」という字は、今の字体からはなかなか想像が付きにくいのですが、甲骨文字では図のような形をしていて、火矢、つまり先端に火を付けて射る矢の象形だったのではないかと解釈されています。その火の色が黄色く見えるところから、yellowを表すようになった、というのが1つの説です。
023702一方、甲骨文字より少しだけ新しい金文(きんぶん)では、「黄」は図のような字形をしていて、おびだま、つまり中国古代の人々が腰にぶら下げていた貴金属の装飾品の象形だったのではないか、とも解釈できるそうです。その貴金属の輝きが黄色く見えるところから、yellowを表すようになった、というのがもう1つの説です。
前者に従った場合、「横」に含まれる「黄」は、単に発音を示す記号、ということになるようです。「横」はもともと門に差し渡す「横木」のことで、それがコウとかオウとかいう発音であったため、似た発音の「黄」という字を借りてきた、というわけです。
それに対して、後者の説に従った場合は、おびだまは腰の横のところにぶら下げるのでもともと「よこ」のイメージがあって、それで、「横木」を表す漢字ができるときに「黄」が使われた、というわけです。
このように、漢字の世界では、魅力的な謎に対して必ずしも快刀乱麻の解決が下されるわけではないのです。いくつかの説が並び立っていて、結局のところ、どれが本当なのかわからない、という場合も多いのです。
しかし、考えてみれば、人生なんてそんなものです。魅力的なこともたくさんありますが、よくわからないままに過ぎていくこともいっぱいあります。そこで私は、思い切ってこう言いたいのです。
漢字は人生そのものだ、と。

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