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新刊特集

新刊紹介

『漢詩の流儀──その真髄を味わう』

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知れば知るほど、漢詩はもっとおもしろくなる

漢詩には長い年月で蓄えられてきた作法・流儀があり、その「流儀」を理解すると漢詩はいっそう面白く読める。
杜甫「石壕吏」・李白「早発白帝城」・白居易「八月十五日夜禁中独直対月憶元九」など、教科書でもおなじみの名詩を多数紹介しながら、そこに詠み込まれる漢詩ならではのテーマ・歳時・イメージについて説き明かす。
漢詩には丁寧な訳と解説がつき、名詩鑑賞の読み物としても楽しめる。便利な索引付き。

著者メッセージ

 古典文学としての漢詩には、長い実作の経験の中で蓄えられてきた作法がある。作法とは、韻字や平仄のように目に見えるものばかりではない。目には見えにくいところにも、主題の設定から題材の選び方まで様々な作法があり、漢詩はその作法に従って作られている。そうした作法をなるべく多く理解しておいた方が、漢詩がいっそう面白く読めるに違いない。その作法をここであえて流儀と言い換えたのは、漢詩の読者の立場から作法というのもおかしな話だと思ったためである。
 漢詩は、日本の文学が始まるときにすでにその傍らに山と置かれていた。そればかりか、日本人はもう漢詩を作り始めていた。現存する日本最古の漢詩集は七五一年に成立した『懐風藻』であるが、それは『万葉集』の成立よりも数十年ばかり先立っている。また勅撰集を見れば、『凌雲集』『文華秀麗集』『経国集』の漢詩集の成立は、九〇五年に成立した『古今和歌集』よりも百年近く早かった。いわゆる国風文化がおこる前に、唐風文化全盛の時代があったのである。漢詩は中国という外国の文学であったけれども、私たちの祖先はそれを読んだだけではなく、早々と、みずから実作する能力も手に入れていた。
 もっともこれ以上に重要なことは、漢詩が日本文学そのものに影響を与え、その成立と成熟に深く関わっていたことであろう。初期万葉時代の歌人である柿本人麻呂の挽歌の作品群に、すでに中国の葬礼文学である誄(るい)と呼ばれる韻文が影響を与えていたことが明らかになっている。その後に現れる『枕草子』や『源氏物語』の作者が漢学に深い素養を持って、その知識が作品にちりばめられていたことは、ここに繰り返すまでもないことだろう。
 このように考えてみると、私たち日本人は生得的に、漢詩を受け入れる感覚を持ち合わせているようにも思えてくる。また事実、それはかなりのところまで正しいといってよい。「国破れて山河あり」という杜甫の漢詩の一句などは、日本の古典の世界に溶け込んで、外国の文学と意識することもなくなっている。しかし難しいところは、まさしくその先にある。私たちは、私たちの流儀で、漢詩を読んでしまっているのではないか。そのため漢詩の真意をいつの間にか取り損なっているのではないか。漢詩に日頃から慣れ親しんでいる者にすれば、このことは不安の種ともなりかねない。
 本書「漢詩の流儀」は、このような思いを懐(いだ)いている方々の手に取っていただければ幸いと思っている。  (「はじめに」より)

主要目次

はじめに

序章
  一 漢詩と政治/二 政治的抒情の由来/三 漢詩と余韻の美学

第一章 漢詩のテーマ
  送別/留別/行旅/登覧/詠史・懐古/辺塞/閨怨/遊仙・招隠・反招隠/山水/田園/詠懐/閑適/感傷/公讌・遊宴/挽歌・悼亡

第二章 漢詩の歳時
  二十四節気/花信風/元日/人日/上元/寒食/清明/踏青/上巳/三月尽/端午/七夕/中秋/擣衣/重陽/冬至/除夜

第三章 詩語のイメージ
一 草木
 春
  春草/梅/杏/桃/李/梨花/牡丹/海棠/柳絮/折楊柳/杜鵑花/落花
 夏
  荷花/菖蒲/葵花
 秋
  菊/茱萸/落葉/楓樹/梧桐/苔/転蓬/白楊
 冬
  松柏/竹/枯草

二 鳥獣虫魚
 鳥
  鶯/鸚鵡/鴎/烏/雁/鷓鴣/雀/燕/鶴/杜鵑
 獣
  牛/馬/猿声/鹿鳴
 虫
  蝉/促織/蛍
 魚
  鯉/鱸魚

三 天文・気象・地理
  日/月/河漢/北斗/参商/雨/霜/雪/雲/風/霞/山/水

漢詩年表
作者別詩題索引
人名索引 

著者紹介

松原 朗(まつばら あきら)
専修大学文学部教授、早稲田大学文学研究科博士課程単位取得満期退学、文学博士(早稲田大学)

主な著作等
■単著
『唐詩の旅―長江篇』 社会思想社・現代教養文庫(1997年)
『中国離別詩の成立』 研文出版(2003年)→中国語訳 『中国離別詩形成論考』 中華書局(2014年)
『晩唐詩の揺籃 ―張籍・姚合・賈島論―』 専修大学出版局(2012年)

■共著
漢詩の事典』 大修館書店(1999年) 松浦友久 編 植木久行・宇野直人・松原朗 著
(校注)続・唐詩解釈事典』 大修館書店(2001年)
『教養のための中国古典文学史』 研文出版(2009年) 佐藤浩一・児島弘一郞・松原朗 著
七五調のアジア ―音数律から見る日本短歌とアジアの歌』 大修館書店(2011年) 岡部隆志・工藤隆・西條勉 編著
『生誕千三百年記念・杜甫研究論集』 松原朗 編 研文出版(2013年)

■その他
NHK教育テレビ高等学校講座 古典総合 「中国の詩」(1988~1990年)    

 

※著者紹介は書籍刊行時の情報です。


「国語教室」100号(2014年11月)に書評が掲載されました。
「漢文教室」201号(2015年5月)に書評が掲載されました。
(※記事はPDFです。ご利用の端末やブラウザによっては、閲覧・ダウンロードできない場合があります)

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