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星座で読み解く日本神話

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 本書は2000年6月の初版で、熱心な読者に支えられてずっと版を重ねている。この本には、ほとんどの日本人が知らない、また学者でさえも知る人が少ないであろう日本神話と星座(星)の話が語られているのである。

 前書きにあるように、「日本人は古来星に関心が薄く、日本の文学に星の描写は少なく、まして、日本の神話、即ち、通常、記紀神話と呼ばれる神話の中にも、星の描写はほとんど存在しないと言われてきた」。しかし、本当にそうだろうか、と本書は始まる。

 本書を手にした読者は、まず、最初の口絵の図柄にびっくりされるだろう。何と、冬の南天の星座にアメノウズメノミコト(オリオン座)とサルタビコノカミ(牡牛座、ヒアデス星団)が向き合っている。オリオン座と牡牛座がこんなふうに見えるなんて、私は著者勝俣先生から口絵の原稿を送って頂いた時、しばし絶句、まじまじと眺め入ったのであった。私の知識ではオリオンが牡牛を追いかけている程度のことであった星座がまさに正体を現したのである。

 勝俣先生は少年のころから天体に関心がおありだったようで、大学院では本格的に星の研究をなさっていた。後書きに、「野尻抱影氏の諸著作には『日本星名辞典』を初めとして、非常にお世話になった。何とか連絡が取れないだろうかと考えていた矢先の大学院生の時にお亡くなりになり、伯牙(はくが)が鐘子期(しょうしき)の死後、琴の弦を絶ったような悲しみを感じ、さめざめと涙を流したことを覚えている」。読んで私は素直に感動した。私淑した師の死に、このようにさめざめと涙を流せるのか。

 とにかく古代日本人は星の神話を生みだしていた。本書は、日本には星の神話がないどころか、星の神話がこんなにも色濃く存在したということを熱く語り、存分に検証していく。日本神話はまさに天上画廊の物語なのである。 (玉木輝一)

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