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新刊特集

新刊紹介

『「坊っちゃん」の通信簿―明治の学校・現代の学校』

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坊っちゃんは、実は高学歴で無免許教師?
 

『坊っちゃん』には、自らも教員だった漱石の現場感覚が息づいている――。
「学校小説」としての『坊っちゃん』の、知られざる意外な実態、そして現代にも通じる教育問題の数々。教職歴三十余年、教職を目指す若者を指導する著者が縦横に、軽妙に語り尽くす、全10章! 読めば、誰かに語りたくなる。

著者メッセージ

夏目漱石の風が吹きつづけている。 

 2014年4月から、朝日新聞が『こころ』を再連載。以降、現在の『吾輩は猫である』までつづいています。
 テレビドラマも盛んです。2016年1月には、『夏目家どろぼう綺談』という、『猫』誕生の契機を描いた小説のドラマ化。そして同月の、二宮和也演じる『坊っちゃん』の放映。また9月には、『夏目漱石の妻』がNHKの土曜ドラマになる。鏡子夫人との生活を「ホームドラマ」として描くようなのです。
  さらに、2017年9月をめざして、新宿区が「漱石山房」記念館の整備を進めています。早稲田南町にあった、漱石の終の棲家を復元し大きな記念館にしようというわけです。 

 これら一連の動き(風)は、漱石の生誕年、没年、作品発表年と関係していることは間違いありません。2016年は没後100年目、『坊っちゃん』発表から110年目、そして、2017年は生誕150年目をそれぞれ迎えた(迎える)からです。国民的作家というだけでなく、百年も前の作品や発言が、現代をもそのまま映し出しているからこその動きでしょう。漱石の存在の大きさを改めて感じます。 

 この風に、少しばかり私も乗らせていただきました。
 それが、この『「坊っちゃん」の通信簿』です。漱石の一ファンである私と、学校の教育現場にあった私の視点から、明治時代の学校や教師や“坊っちゃん先生”を眺め、現代の学校や教師や教育問題とのつながりを考えてみようと試みたものです。「漱石先生なら、現代をどう見るだろうか」という思いで綴った部分もたくさんあります。
 次の言葉は、本書の読後感について、読者諸氏からいただいたものの一部です。私のコメントも添えて、本書の紹介とさせていただきます。 

  「『坊っちゃん』を読み直した時に、今までとは違う読み方ができた。・・・研究書ではないけれど背景が深い。実に示唆に富む内容が満載でした。」
  私も、今回の執筆に当たって何度となく読み直してみました。すると、そのたびに全く違う風景が見えてくるんですね。「示唆に富む」のは私の力ではなく、読み直して初めて分かる、『坊っちゃん』の深~い内容があるからだと思うのです。 

   「気軽に、それこそ、電車の中でも読める、判型がいいですね。表紙も良いです。バッ グの中にしまって昨日は出掛けましたよ。でも電車の中で読むのは要注意。旧制四中の服装・遅刻指導のところでは,思わず吹き出してしまいました。」
   『坊っちゃん』の痛快でユーモラスで軽妙な語りとタッチを忘れずに、が執筆の基本でした。漱石はエンターティナーですから。 

  「漱石の性格も読み取りつつ、現代の教育現場の実情とリアルに比較している。現職教員として共感する・・・」
 『坊っちゃん』にかぎらず、漱石は新しい。だからこそ、現代の現実とも「リアルに比較」できるのかもしれません。鋭い視点からのご指摘、「こういう方に読んでいただきたい」という私なりの思いが実現したような言葉です。

主要目次

    はじめに
    序 章 清とピグマリオン
    第一章 坊っちゃんは高学歴者
    第二章 免許が要らない時代の先生たち
    第三章 坊っちゃんも現代先生も多忙なのだ
    第四章 坊っちゃんの時代の遠足・運動会・修学旅行
    第五章 バッタ事件と宿直というお仕事
    第六章 学士様赤シャツはスゴイ
    第七章 坊っちゃんはダメ教師なのか
    第八章 「先生ぽさ」と山嵐のジレンマ
    終 章 坊っちゃんのキャリア
 あとがき

著者紹介

村木 晃(むらき あきら)
1955年、東京に生まれる。早稲田大学教育学部卒業、筑波大学大学院教育研究科修了。高等学校教諭を経て、現在、東京学芸大学・橫浜美術大学・東京未来大学講師(非常勤)。担任学研究会の活動を通じて、教育理論の実践化と実践の理論化の研究を行っている。

 《主な著書》
   『ワークシートで学ぶ 生徒指導・進路指導の理論と方法』(共著 春風社 2013)、『クラス担任が自信をもって「語る」12ヵ月』(共著 学事出版 2015) など。

※著者紹介の情報は書籍刊行時のものです。

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