大連・旅順の過去と現在をつなぐ歴史地図
日露戦争後、日本の租借地となった大連・旅順。多くの日本人が暮らしたその都市の変遷を、現在の地図上に再現。歴史的建造物や土地の解説に加え、大連・旅順にまつわる人物・文化についてのコラムも掲載。好評『上海歴史ガイドマップ 増補改訂版』の姉妹編。
著者メッセージ
旧満洲地域は上海とならんで、二〇世紀の日本人の在外生活史のなかにおいても、とりわけ重要な位置を占めた場所であり、同時に日本、中国そしてまたロシアの人々の共同体としての記憶が重なりせめぎ合う場所でもある。その多元重層的な文化の相貌を地図の上に可視化し、大連・旅順の都市景観の現在を、場の歴史的な状況と重ね合わせて俯瞰しようとするのが本書のねらいである。この街にさまざまな関心を抱く人々と共有できる多様な時空景観的情報のプラットフォームの一端をここに構築したい。
近代以来の美しい街並みを誇る大連や旅順でも、一方で急激な経済的発展につれて、開発行為による旧市街の景観破壊が避けがたく進行しているのも事実である。『アカシヤの大連』など一連の「大連もの」が、かつてノスタルジックに想起させた都市のランドスケープも、日々に変貌を重ねている。そしてまた、「帝国」の野望とともにあった大連・旅順を、自らの切実な経験として知る人々の記憶は、私たちの世界からついにいよいよ消え去ろうとしている。それは逆説的に、人々の「記憶の場」へのこだわりをうながす所以ともなるのではないか。
都市空間が蓄えた時の味わいをその身に感じ取りながら、自らの足をたよりに自在な街歩きを楽しもうとする人々によって、この地図が活用されることを切に願っている。
(「はしがき」より)
主要目次
はしがき
【地図編】
凡例
1中山広場/2人民路/3労働公園/4南山麓/5西崗/6人民広場/
7沙河口站/8中山公園/9鉄道工場/10鳳鳴街/11馬欄河/12星海広場/
13黒石礁/14石葵橋/15桃源/16寺児溝/17大連市街周辺/
18旅順東南部/19旅順東北部/20旅順站/21旅順西北部/22旅順西南部/23旅順周辺
24金州/25大連旅順広域/26遼東半島
【解説編】
1中山広場/2人民路/3労働公園/4南山麓/5西崗/6人民広場/
7沙河口站/8中山公園/9鉄道工場/10鳳鳴街/11馬欄河/12星海広場/
13黒石礁/14石葵橋/15桃源/16寺児溝/17大連市街周辺/
18旅順東南部/19旅順東北部/20旅順站/21旅順西北部/22旅順西南部/23旅順周辺/
24金州/25大連旅順広域/26遼東半島
参照・関連資料
《コラム》
②『満洲報』の文芸欄を読む
③「男装の麗人」と呼ばれた川島芳子
④ 石沢英太郎『さらば大連』――都市の時間と地理
⑤ 傅立魚という都市空間――大連の海と道を航ったひと
⑥ 関東州の「日系満洲文学」と文芸同人誌
⑦ 関東州法院と平石氏人法院長
索引
あとがき
著者紹介
木之内誠(きのうち まこと)
1954年、川崎市生まれ。東京都立大学大学院修了。現在、首都大学東京人文社会学部人文学科教授。専門は中国文学。著書に『上海歴史ガイドマップ 増補改訂版』(大修館書店)、『近代中国都市案内集成・大連篇』(共著、ゆまに書房、監修・解説)など。
平石淑子(ひらいし よしこ)
1952年、東京生まれ。お茶の水女子大学大学院修了。博士(人文科学)。現在、日本女子大学文学部史学科教授。専門は中国近現代文学、比較文化、比較文学。著書に『蕭紅研究 その生涯と作品世界』(汲古書院)など。
大久保明男(おおくぼ あきお)
1968年、中国東北地方生まれ。東京都立大学大学院修了。現在、首都大学東京人文社会学部人文学科教授。専門は中国近現代文学。著書に『偽満洲国的漢語作家和漢語文学』(中国・北方文芸出版社)など。
橋本雄一(はしもと ゆういち)
1969年、広島生まれ。東京都立大学大学院修了。現在、東京外国語大学大学院総合国際学研究院准教授。専門は中国文学・植民地社会思想。著書に『多文化社会読本 多様なる世界、多様なる日本』(共著、東京外国語大学出版会)など。
*著者紹介の情報は書籍刊行時のものです。