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新刊特集

新刊紹介

『中国 虫の奇聞録』

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虫にまつわる逸話に見る 中国文化の奥深さ
 

中国文明の中で大きな役割を果たしてきた虫の中から、権力の証であるセミ、悲恋を彩るチョウ、パラレルワールドの主役であるアリ、霊力をもつと信じられたホタル、富裕層に珍重されたハチ、為政者の徳を象徴するバッタの6つを取り上げ、歴史・文学・美術・生態観察・昆虫食の逸話も交えて自在に語る、虫から見た中国文化論。

著者メッセージ

……チョウは死者の魂であるとか、ホタルは朽ちた草が変化して生まれるとか、飛蝗は天罰であるといった、現代のわたしたちからすれば突飛なお話が少なくないが、それらは古代中国人は昆虫がどこからくるのか、もっといえば生命はどのように誕生するのか、思いをめぐらす過程で紡がれたものであり、彼らの自然観や死生観、倫理観、願望などの反映である。昆虫にまつわる珍聞、異聞をとおして、彼らの精神世界が多少なりとも描けていれば幸いである。(「はじめに」より)

主要目次

 口絵

 蝉〈セミ〉 
死者再生の願い/セミがとまると出世する/セミのバッジは権力のあかし/高潔のシンボル/風を吸い露をのむ/セミは儚くない/迫害される虫/絵画のなかのセミ/セミ捕り遊び/セミを大量に捕る人びと/グルメが愛した食材/夜泣きの特効薬/虫愛づる宮女たち/セミ賭博/セミ売り/セミの飼育/セミの名前/分類によってさらに複雑に/佳人の生まれかわり

蝶〈チョウ〉
畑の野菜がチョウになる/万物はめぐる/唐代の観察者/チョウとともに昇天した仙人/たましいがチョウになる/チョウの道行き/死を告げる虫/チョウをあやつる道士/空飛ぶ刺身/チョウの饗宴/明代のチョウマニア/チョウとウリ/南シナ海の巨大チョウ/チョウを食べる/荘周の夢

蟻〈アリ〉
南柯の夢/アリのユートピア/パラレルワールド/アリの霊力/アリへの畏れ/アリの恩返し/最古の食用昆虫/アリを使ったエコ農業/芸をするアリ/最後のアリつかい/かどめ正しいケンカ好き

蛍〈ホタル〉
「腐草、蛍となる」/中国二千年の勘ちがい/自然に学ばず文字に学ぶ/たましい、化してホタルとなる/ホタル、化して金となる/ホタルの光で本は読めるか/邪をしりぞける虫/空前絶後のホタル狩り 

蜂〈ハチ〉
王さまの珍味/蜜の誘惑/ハチの巣が薬に/蜂蜜より貴重な蜜ロウ/唐代を照らしたロウソク/養蜂のはじまり/ハチの科学/ハチの王はオスかメスか/養子をとるハチ/経典に異を唱えた科学者たち/ハチは毒から生まれる/武器をもつ虫/サルと組めば出世する

飛蝗〈トノサマバッタ〉
統治者がもっとも怖れた虫/天をおおうバッタの群れ/バッタが飢餓をひき起こす/バッタが国家を転覆させる/サカナがバッタになる?/エビもバッタになる/飛蝗は天罰/バッタを呑んだ太宗皇帝/酷吏が飛蝗をまねく/蝗害をまぬがれたわけ/バッタ退治の神様/民間信仰が浮きぼりにした蝗害分布/迷信を意に介さなかった王莽/漢代の合理主義者/玄宗のバッタ退治/姚崇の宮廷闘争/詩人とバッタ/幼虫退治から卵の駆除へ/バッタを押しつけ合う/退治は防除にしかず/天敵を利用したバッタ退治

主な参考文献
あとがき

著者紹介

瀬川 千秋(せがわ ちあき)

フリーランス・ライター、翻訳家。著書に『闘蟋―中国のコオロギ文化』(大修館書店:第25回サントリー学芸賞)。共著に『中国の暮らしと文化を知るための40章』(明石書店)、訳書に『マンガ般若心経入門』(講談社)、『マンガ仏教入門』(大和書房)、『マンガ仏教的生き方』(大和書房)、共訳に『わが父魯迅』(集英社)など。

※著者紹介の情報は書籍刊行時のものです。

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