当館では、『大漢和辞典』を始めとする漢和辞典を発行する大修館書店が、漢字や漢詩・漢文などに関するさまざまな情報を提供していきます。

漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0065
漢文を読んでいたら、「さんずい」の右側に、上は「勿」、下が「目」になっている字が出てきたのですが、なんと読むのですか? ちなみにその次の字は「然」です。

A

006501珍しい字に出会ったものですね。調べるのに、結構苦労しました。
まずは早速、小社の誇る『大漢和辞典』を調べてみたのですが、図のように、「目」が「日」になっている似たような字はあるのですが、残念ながら、おっしゃる字そのものは出ていないのです。これは困りました。
そこで、収録字数8万字と高らかに歌っている『中華字海』(中華書局・中国友誼出版公司)を調べてみると、さすがです、出ていました。ただしそっけないもので、説明としてはまず、『大漢和辞典』に出ている上掲の漢字と同じ、とあり、ついでに「『集韻』を見よ」と書いてあって、それで終わりです。
006502そこで今度は『集韻』(しゅういん)という字典を調べることになります。これは11世紀、宋(そう)王朝の時代に編纂されたもので、漢字をその発音によってグループ分けしてある字典です。調べてみると、この字典のうち、「隊」という漢字に代表される発音のグループのところに、図のように問題の漢字が出ていることがわかりました。
さて、問題は読み方です。『中華字海』の説明によれば、『大漢和字典』に出ている漢字の読み方と同じでよいはずです。ところが『大漢和辞典』では、この漢字の音読みを4種類も列挙しているのです。そのうち、『集韻』の「隊」という字に代表される発音と合致するのは、「カイ」「タイ」の2つです。「カイ」と読むときには「青黒い色」という意味、「タイ」と読むときには「ひたして色を去る」(漂白する)という意味、と『大漢和辞典』には書いてあります。
以上の情報に加えて、次の漢字が「然」であることを考慮すると、問題の字+「然」で、「青黒いようす」という意味で使われていると考えるのがよさそうです。だとすれば、この場合、この漢字は「カイ」と読むべきでしょう。

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