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漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0045
「心」という漢字の最後に打つ2つの点は、一番長い2画目の線のはねをまたいで打たないと、漢字テストなどでは×になるのでしょうか?

A

004501「心」という字の古い字形を見てみると、図のように、現在の楷書(かいしょ)とは似ても似つかない形をしてます(左が金文、右が篆文)。これらは、心臓の形を写した象形文字だと言われていて、そう聞くと、なんだか生温かいような感じがしてくるから不思議です。
そこで、字源的な観点からは、2つの点をどのような位置に打とうが、間違いであるとは言えません。また、他の字と間違いかねないかどうか、という観点から検討しても、類似の字形はありませんので、問題はないと思います。
そこであとは、デザイン感覚、美的センスの問題になります。たしかに、この2つの点が2画目のはねをまたいでいる方が、バランスはよさそうです。実際、楷書ではそのように打つのが圧倒的に多いようです。しかし、もし今この画面を、WindowsマシンのMSゴシックというフォントでご覧になっているとすると、その「心」の2つめの点が2画目のはねの真上に打たれていることにお気づきになるに違いありません。活字では、文字を大きく見せるため、このようなデザインにすることが多いようです。
というわけで、ご質問に対しては、×にはならない、というお答えになります。ただし、かつては漢字の字体指導が非常に厳しく行われた時代がありました。そういう時代には、この程度の問題で×を付けていたこともあるそうです。そのころに漢字教育を受けた人が採点者だと、×を付ける可能性がないとはいえません。採点者の「心」にあなたの人生がかかっているような局面では、点はまたいで打っておくにこしたことはないかもしれません。

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