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漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0497
「明日」を「あした」と読むのは、間違いなのですか?

A

「明日」を「あした」と読むのは、漢字2文字以上をまとめて日本語1語で読んでしまう、熟字訓の一種です。けっして間違いではありません。ただし、熟字訓の中にも、『常用漢字表』で認められているものとそうでないものとがあるのです。
『常用漢字表』とは、現代社会における漢字の使い方の基準を定めたものですが、その中には、主に熟字訓の使い方を定めた「付表」が含まれています。この「付表」に「明日」は含まれているのですが、読み方は「あす」しか挙げられていません。つまり、『常用漢字表』では「明日」を「あす」と読むのは認めているが、「あした」と読むのは認めていない、ということになるのです。
「明日」を「あした」と読むのは間違いだ、という主張があるなら、それは『常用漢字表』に忠実に従った主張だということになります。実際、義務教育は『常用漢字表』の範囲内で行うのが建て前ですから、先生によっては、「明日」は「あした」とは読まない、という指導をなさる方もいるようです。
ただし、世間一般では「明日」を「あした」と読むことが多いのも、紛れもない事実です。『常用漢字表』の価値は価値で認めつつ、運用にあたってはあまり厳格すぎないようにするのがいいのではないか、と思うのですが……。
ちなみに、『常用漢字表』が「あした」を認めていないのは、「あした」は主に話し言葉で使われ、「あす」は主に書き言葉で使われるからだそうです。たしかに、話し言葉は「書かれない」わけですから、漢字は不要です。でも、そんなにうまく分かれるものでしょうかねえ。

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