当館では、『大漢和辞典』を始めとする漢和辞典を発行する大修館書店が、漢字や漢詩・漢文などに関するさまざまな情報を提供していきます。

漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0430
「心をこめる」を漢字で書くと「心を込める」ですよね。では、「心がこもった」は漢字ではどの字を使うのですか?

A

一般に、辞書で「こもる」を調べると、「籠もる」という漢字が出てきます。そこで、「心がこもった」も「心が籠もった」と書くのがいい、ということになります。
ただ、この「籠」という漢字には、いくつかの問題があります。たとえば、この字は本来、竹で編んだ「かご」を意味する漢字で、中国語としては「かごに入れる」という意味で使うことはありますが、日本語の「こもる」という意味で使うことはありません。
また、日本語の「こもる」に当てるとしても、この漢字は従来、建物の中に入ったまま出て来ないことを表すために使われて来た漢字です。犯人が人質をとって「立て籠もる」というのがその代表的な例で、昨今はやりの「ひきこもり」も、漢字で書くと「引き籠もり」になるでしょう。
また、ワープロでこの字を書こうとすると、ちょっと気を抜くと略字の「篭」が出てきてしまう、なんてこともあります。
というわけで、どうも「籠」という漢字はイメージがあんまりよくないのです。「心がこもった」の場合、漢字で「心が籠もった」と書くのは、あんまりおすすめできません。
それでもどうしても、という場合には、中華の点心を思い浮かべることにしましょう。おいしい点心を蒸すために使う「せいろ」、あれを漢字で書くと「蒸籠」なのです。ふたを開けると蒸気とともにおいしそうな香りが立ち上る。――「心が籠もった」というのも、あんなイメージで行きたいところです。

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