当館では、『大漢和辞典』を始めとする漢和辞典を発行する大修館書店が、漢字や漢詩・漢文などに関するさまざまな情報を提供していきます。

漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0409
「龍」を「竜」と書くことがありますが、「襲」の「龍」を「竜」にした漢字はあまり見かけません。どうしてですか?

A

040901強引に作ってみると、図のような漢字になります。たしかにあまり見かけませんよね。
現在、私たちが使っている新字体の多くは、正式には、1949(昭和24)年の「当用漢字字体表」によって決められました。この表を作る際にも、「襲」を略字にしてしまおうという案はあったようです。
その点について読売新聞社会部編『日本語の現場第2集』(1976年、読売新聞社)では、字体表案の取りまとめ役だった林大先生の「不採用になった理由は、活字設計上の問題ですよ」というコメントを紹介した上で、次のように説明しています。

活字にすると縦長になる。どうもこれではサマにならない、と原案を作成した「活字字体整理に関する協議会」で“却下”となった。国語審議会の「字体委員会」でも、この意見が尊重されたのだという。

実際、江戸時代以前の手書きでは、この「サマにならない」字体も使われていたようです。しかし、活字としては「美意識」の上から不合格だった、ということでしょうか。
常日ごろ、「サマにならない」生活を送っている私などは、「サマにならない」漢字だって、使い続けているうちにだんだんサマになってくるんじゃないか、などと、はかない希望を抱いたりしてしまいます。
国語審議会の先生方は、さぞかし「サマになる」方々ばかりだったんでしょうねえ。

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