当館では、『大漢和辞典』を始めとする漢和辞典を発行する大修館書店が、漢字や漢詩・漢文などに関するさまざまな情報を提供していきます。

漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0260
「努」の部首は「力」ですが、「女」だとしている辞書もあります。どうしてですか?

A

同じことの繰り返しになってしまうのですが、部首とは、漢字の意味分類として出発したものです。そこで、ある漢字の部首を考えるときには、その漢字の意味を考えるのがまず第一の方法です。「努」の場合、「つとめる」という意味は力との関係は強いですが「女」との関係は薄いですから、部首は「力」なのです。
また、形声文字の原理を利用して部首を考えることもできます。ある漢字の発音を表している部分を決めることができれば、そうではない部分は意味を表していることになり、そこが部首である可能性が高いのです。「努」の場合、「奴」の音読みドがそのまま「努」の音読みになっていますから、「奴」が発音を表す部分といういことになり、「力」は意味を表す部分、つまり部首ということになるのです。
以上のように、「努」の部首が「力」であることは間違いないのですが、それでも「女」を部首としている辞書があるとすれば、それをどう理解すればよいのでしょうか?
Q0254でご説明したように、部首というものは、漢和辞典を引くときくらいにしか役に立ちません。そこで、部首をあくまで実用的に考えて、できるだけわかりやすいものを部首としよう、という編集方針をとる辞書もあるようなのです。その「わかりやすい」を決める方法として、推測ですが、「一番最初に書くものを部首とする」という方法を採っている辞書があるようなのです。
「努」の場合、伝統的な部首に関する議論を無視すれば、「女」と「又」と「力」とが、それぞれ部首となりうる可能性があります。そのうちの、一番最初に書く部分は「女」ですから、それを部首としよう、ということになります。
以上のように、部首とは、漢和辞典の編集方針によってブレてくるものなのです。読者のみなさまには、そのあたりをご理解の上、漢和辞典を利用していただくようにお願いする次第です。

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