当館では、『大漢和辞典』を始めとする漢和辞典を発行する大修館書店が、漢字や漢詩・漢文などに関するさまざまな情報を提供していきます。

既刊ピックアップ

既刊ピックアップ

『盆栽の誕生』

大修館書店HP商品ページへ

bonsai

 とあるパーティで久しぶりにお目にかかった著者からの一言で、本書の編集は始まりました。
 「盆栽に興味はありませんか?」「えっ、ぼんさい、ですか… 植物は嫌いじゃありませんが。そういえば祖父が育ててましたっけ。棚のあたりで遊んでいると怒られたりして」なんて、少々ずれた会話からこの企画は生まれました。著者の依田氏はちょうど大宮盆栽美術館を退かれたところでしたので、良い区切りとして盆栽の歴史をまとめたいとお考えだったのです。そこにタイミング良く巡りあえたのでした。もしこの日お目にかからなかったら、この本は他社から発行されていたかも。まさに「編集者も歩けば棒に当たる」ですね。
 さて、「盆栽」と聞けば、ご隠居さんの趣味くらいのイメージしかお持ちでない方も多いことでしょう。ところが、現在の盆栽はBONSAIとして世界中に広まっているのです。日本の若い方たちにも広がりがありますが、それ以上に海外の方たちに人気なのですね。
 ただ、書店に行きましても、育て方の実用書や、美しい盆栽を集めた写真集ばかり。盆栽がたどってきた歴史を扱ったものは見当たりません。室町将軍や織田信長が愛で、徳川将軍や大名が愛好し、幕末に訪れた外国人は園芸技術に驚いています。明治に入ってからは皇室をはじめ、政財界人、数寄者がこぞって育成し楽しんでいます。本書では、そのような歴史を、伝統とは何かという問いかけを持ちながら、さまざまな絵画や文献を丹念に検証してたどっていきます。
 盆栽は自然のエッセンスを抽出し、鉢の中にその自然を再現することを目指し、決して人が身勝手に作り上げたものではないということ。また、時代の価値観や美意識とは無縁ではないということ。本書を読めば、改めて盆栽の価値を感じ取ることができるはずです。時代時代のトレンドや、愛好者のさまざまなエピソードがちりばめられ、本当に面白い盆栽の歴史になっています。
 2017年4月には大宮で世界盆栽大会が開かれます。4年に一度の世界規模の盆栽まつりで、世界各国から多くの参加者がいらっしゃるそうです。ぜひ本書を一読して、実物のみならず、歴史にも通じていただければと思います。
 なお、本書には盆栽になじみのない方のために、ミニ用語集や鑑賞のポイント、素敵な盆栽が見られる美術館や庭園ガイドを付けました。樹形は造園家でもあるイラストレーターの大野八生(やよい)さんに描いていただきました。きっと役立つことと思います。

 本書の発刊直後、盆栽村(さいたま市)にある盆栽美術館と盆栽園さんを訪ねました。値段の付けようもない樹齢数百年の盆栽から、小品盆栽とか草もの盆栽と呼ばれるミニアチュールのような盆栽まで、さまざまな盆栽があふれるほど。本書を読み込んでいたせいか、見るだけではおさまらず、ついつい心惹かれる一鉢を求めてしまいました。しばらくは社内の窓辺においていたのですが、ずっと室内ではいけないというので、自宅のベランダへ移動。本当に見飽きないのですよね。さて、現在はというと、そろそろ芽吹いてきてもいいはずと思っているのですが、元気なのは苔だけ。大丈夫かなーと心配する毎日です。
 どうでしょう。皆さまも一度、ゴールデンウィークに大宮の盆栽村を訪ねてみませんか。絶賛開催中の大盆栽まつりで、あなたもあなただけの一鉢に巡り会えるかもしれません。(木村悦子)

  • facebookでシェア
  • twitterでシェア

一覧へ

次へ