当館では、『大漢和辞典』を始めとする漢和辞典を発行する大修館書店が、漢字や漢詩・漢文などに関するさまざまな情報を提供していきます。

漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0510
「有」という漢字を「とも」と読むことはできますか?

A

これは、子どもの名付けに関するご質問です。私は姓名判断の専門家ではなし、他人の名付けに口出しできるような、なにかえらい人間でもないので、名付けに関するご質問については、基本的にお答えしないことにしております。そこで、今回も同じ扱いにするつもりだったのですが……。
Q0352でご説明したように、名前の場合にのみ使われる特殊な漢字の読み方を、「名乗(なのり)」と言います。源頼朝のように「朝」を「とも」と読むのも名乗ですし、徳川家光のように「光」を「みつ」と読むのも名乗です。名乗は、そこらじゅうにいっぱい転がっています。
荒木良造編『名乗辞典』(東京堂、1959)を調べると、「有」に「とも」という名乗があることがわかります。つまり、昔から日本人は、「有」と書いて「とも」と読む名前を使ってきたのです。
さて、ここで気になるのは、どうして「有」を「とも」と読むのか、ということです。名乗の多くは、今ではどうしてそう読むのか、わからなくなってしまっています。でも、このご質問を拝見した瞬間に、私の頭の中でひらめくものがありました。それは、『論語』の有名な一節です。

朋(とも)有り、遠方より来たる、亦(ま)た楽しからずや。

この最初の部分を原文で書くと「有朋」となるのですが、「有」を「とも」と読むのは、この一節を踏まえたしゃれなのではないでしょうか。
まったく無責任に珍説を披露してしまいました。でも、名乗に関して、なぜそう読むのかをいろいろ考えてみるのは、それはそれでおもしろいものなのです。

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