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漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0455
「月日が経つのがはやい」の「はやい」は、「早い」ですか、それとも「速い」ですか?

A

一般に、「早」は時間的な観点から、「速」はスピードの観点から、それぞれ「はやい」ことを表すとされています。「彼は毎日、会社を出るのがはやい」の場合は「早い」、「会社から駅まで歩くのがはやい」の場合は「速い」と書く、といった具合です。
ところが、中にはこの原則にあてはまらないように思われる場合も存在します。「早がわり」「手っ取り早い」などがそのケースです。これらは一見、スピード的な「はやい」のように思われますから、「早」を使うのは間違いではないかとも考えられます。しかし、一般に「早」が使われているのは、なぜなのでしょうか。
それはおそらく、その行為がふつうよりも時間的に「はやく」終了してしまう、という点にポイントがあるからではないでしょうか。そうとでも考えないと、なかなかナットクのいかない漢字の使い方です。
ご質問の「月日が経つのがはやい」も、「早い」を使うことが結構多いようです。これは、自分としてはまだ1年ぐらいしか経っていないつもりなのに、もう10年も過ぎてしまっていた、というような、いわば主観的な時間の問題として、「早い」を使っている、と理解するのがよさそうです。10年後なんてまだまだ先のつもりでいたのに、「早くも」その時が来てしまった、というような感覚でしょうか。
とすると、「月日が経つのが“速”い」と自信を持って書けるのは、玉手箱を開けた瞬間の浦島さんぐらいのものでしょうか。だって、一瞬にして何百年かが過ぎ去ってしまったのですからね。この場合は、月日の経過の「スピードがはやい」とも言えましょう。

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