当館では、『大漢和辞典』を始めとする漢和辞典を発行する大修館書店が、漢字や漢詩・漢文などに関するさまざまな情報を提供していきます。

漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0314
「櫂」と「翼」とでは、「羽」の部分の形が違いますが、この違いにはなにか法則があるのですか?

A

031401これは、新字体旧字体という問題が絡んでくるお話です。まずは試しに、漢和辞典で「翼」の旧字体を調べてみてください。図のような形をしているはずです。この形なら、「櫂(かい)」の「羽」の部分とおなじですよね。
実は、「羽」はもともと、このような形をしていたのです。それが、当用漢字が制定されたときに、現在、私たちが使っている形へと変更されたのです。それに伴って、「翼」「翌」などの「羽」を含む漢字も、右へならえで形が変更されたのです。
それではなぜ、「櫂」の「羽」の部分は、旧字体のままなのでしょうか?
その理由は、この漢字が当用漢字ではないことにあります。新字体というのは、あくまで当用漢字(後には常用漢字)にのみ適用される字体ですから、当用漢字でない漢字については、字体の変更はされなかったのです。
ご質問の「羽」の部分の違いは、以上のように説明をすることができます。しかし、この両者の違いは、結局のところ、当用漢字(常用漢字)であるかないかを、一字一字調べていかないと、判断はできないものなのです。
仕事というのは恐ろしいもので、私のような因果な商売をしている者は、日々の仕事をこなしているうちに、ある漢字が常用漢字であるかどうか、だいたい頭に入ってしまいます。でも、一般の人たちは、そんなことに貴重な脳細胞を費やす必要はありません。気になったときに辞書を引いて確認する、というので、十分だと思います。

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