当館では、『大漢和辞典』を始めとする漢和辞典を発行する大修館書店が、漢字や漢詩・漢文などに関するさまざまな情報を提供していきます。

漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0233
「けじめ」と読む漢字はありますか?

A

いつもお世話になっている小学館『日本国語大辞典』で「けじめ」を調べてみますと、漢字での書き方は掲げていませんが、昔は「差別」「区別」という漢字を当てることもあったという記述があります。「けじめをつける」とは、「区別をつける」ということですから、意味の上から当て字として用いたものでしょう。
では、「けじめ」を漢字1字で表すことはできないのでしょうか。ここで『大漢和辞典』にご登場いただきましょう。その索引で調べてみると、「けじめ」という字訓(訓読み)を持つ漢字がありました。それは意外なことに、「数」(旧字体では「數」)という、実に見慣れた漢字です。
早速、本文に当たってみると、「数」の意味の説明として、たしかに「けじめ」が書いてあります。そして、その根拠として、中国のある古典の注にある「数は、等差を謂ふなり」という一文を挙げています。ここでいう「等差」とは、「ちがい」というくらいの意味なのでしょう。ちがいをはっきりさせることは、けじめをつけることですから、「数」を「けじめ」と読むことができる、というわけです。
以上、「けじめ」を漢字で書くとすれば「区別」「差別」「数」という3つの書き方がありうることがわかったわけです。しかし残念ながら、喜び勇んで「けじめ」をこれらの漢字で書いてみたところで、現代日本では、それを「けじめ」と読んでくれる人はほとんどいないと思われます。
文字による表現というのは、相手がきちんと読んでくれなければ意味がありません。自分の好みによる表現と、読み手が理解できる表現との間に、きちんとしたけじめをつける必要がありそうです。

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