当館では、『大漢和辞典』を始めとする漢和辞典を発行する大修館書店が、漢字や漢詩・漢文などに関するさまざまな情報を提供していきます。

漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0194
「防守」という熟語がありますが、これは「防いで守る」という意味でしょうか。それとも「守るために防ぐ」という意味でしょうか?

A

むずかしいことばをご存知ですね。小社の『明鏡国語辞典』にも『新版漢語林』にも載っていませんでした。もちろん、『大漢和辞典』には「ふせぎまもる」という意味だと載っていますし、岩波書店の『広辞苑』にも同様の記述があります。
さて、漢字2字からなる熟語の構造については、一般に、次のようなパターンがあるとされています。

1主語と述語の関係からなるもの。(日没・雷鳴など)
2動詞と目的語の関係からなるもの。(発言・飲酒など)
3修飾と被修飾の関係からなるもの。(大河・高山など)
4似た意味の漢字を並列したもの。(燃焼・分解など)
5接頭語・接尾語が付属したもの。(不発・自然など)

これら以外にも、「綿綿」「髣髴(ほうふつ)」などのように似たような発音の2字を重ねて擬態語・擬音語のような働きをするものや、「琵琶」「奈落」のような外来語の当て字として成立したものもありますが、そういう特殊なものを除けば、おおむね、熟語の構造はこの5つに分けられると思われます。
そこで「防守」ですが、これは上の4に相当するのではないかと思われます。「防ぐ」というのも「守る」というのも、意味としては似たようなものだからです。「守るために防ぐ」が該当するとすれば上記の2でしょうが、だとすると「守りを防ぐ」という意味になってしまい、ちょっとおかしなことになると思います。

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