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漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0148
「病葉」と書いて「わくらば」と読むそうですが、「病」に「わくら」という読み方があるのですか?

A

小社『明鏡国語辞典』を引きますと、「わくらば」とは、「病気や害虫にむしばまれて変色した葉。特に、夏の青葉にまじって赤や黄に変色している葉」と出ています。この意味と「病葉」という漢字とは、いかにもぴったりしていますから、「病」に「わくら」という読み方がありそうな気がするのも、ごもっともなことであります。
しかし、このことばは、そう単純な生まれ育ちではないようです。いつもお世話になる小学館さんの『日本国語大辞典』を調べてみると、このことばは室町時代からあったようです。しかし、その語源については、「わ」は若い、「くら」は食らうの意味だとか、もともと「分ける葉」だとか、いくつか説があるようで、はっきりしないのです。つまり、「わくら」とは何かは、はっきりわからないのです。
したがって、「病」に「わくら」という読みがあると考えるよりは、「病葉」の2文字で「わくらば」と読む熟字訓のようなものである、と理解しておいた方が、よいのではないかと思われます。
ちなみに、ややこしいことに「わくらば」と読む熟語は他にもあります。それは「邂逅」という熟語で、ふつうに読めばカイゴウあるいはカイコウですが、この2字で「わくらば」と読むこともあるのです。ただし、その場合は「病気の葉」という意味とは全く違って、偶然に出会う、というような意味になります。こちらはなんと『万葉集』に用例がある古いことばですが、やはり、語源については定説がないようです。

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